J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

ワーク&ラーニングスペース最前線 第9回 JR東日本総合研修センター (福島県・白河市)

どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行氏が
企業の研修施設をめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。

東京大学大学院
経済学研究科 准教授
稲水伸行氏
1980年広島県生まれ。2003年東京大学経済学部卒業。
東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員・特任助教、筑波大学ビジネスサイエンス系准教授を経て現職。
経営パフォーマンスを高めるオフィスについて研究を行う。

[写真]=中山博敬

自然のなかで快適な学びを提供

JR東日本総合研修センターは、福島県白河市の自然豊かな丘陵地にある。約50万平米という広大な敷地内には、研修棟や実習棟、宿泊棟といった建物に加え、野外研修施設やグラウンド、野球場、テニスコートなど充実した施設がそろう。

「以前は大宮と仙台に2つの研修施設があったのですが、それを統合し、2002年4月に完成しました。実物の車両や線路、機械などに触れる機会を増やしたいという目的と、自然環境の良い場所で集中して学んでもらいたいという思いがあり、この地を選びました。『企業は人材によって支えられ、成長する』という弊社の考えに合った研修施設だと考えています」(東日本旅客鉄道人財戦略部人財育成ユニットマネージャーの久道勇氏、以下同)

研修を委託されている「JR 東日本パーソネルサービス」には、常時JR東日本から出向する講師120名が常駐。研修施設の昨年の利用者数は2万4,227名、1年間で社員全体の約半数が研修を受講した計算だ。昨年は約1,000本の研修を実施したという。早速主だった施設を紹介していこう。

常時1,500名収容できる研修棟

研修棟には全部で36の教室が備えられている。通常の教室は、1室約40名収容可能だ。

「2つの教室をつなげたり、分割して使用できる教室もあります。自在にレイアウトができる可動式の机といすを使っているので、特に長期の研修は、研修生自身が空間をカスタマイズして、自由な使い方をしていますね」

視聴覚室は全部で320席。ステージに向かって階段状に机といすが並んでおり、役員が講義をするときなどに使用する他、体育館等で行う講義の音声を同時中継しながら利用することが可能だ。その他、システム操作などの訓練を行うOA 研修室もある。

「すべての部屋には『安全綱領』と『グループ理念行動指針』が掲示されています。安全綱領を唱和してから、研修に入ることもありますよ」

リフレッシュできる空間も充実

弓なりの廊下で研修棟とつながる生活サービス棟は、宿泊室や食堂、浴室などが備えられた建物だ。400人以上収容する食堂は広々としており、受講生同士がコミュニケーションをとるパーティースペースやラウンジ、憩いルームも充実。1F のメインラウンジは、窓の外に広がる美しい中庭を望む開放的な空間だ。

「夕食後、談話スペースに集まってコミュニケーションをとっている人が多いですね。リフレッシュやリラックスにも役立つ空間です」

施設内にはその他トレーニングルームがあり、屋外には整備の行き届いたグラウンドや野外研修施設も備えられている。

「グラウンドは、カリキュラムのなかでチームワークトレーニング等身体を動かすものを取り入れたり、オフタイムでも運動ができるようにするために、設けています。近隣住民に貸し出したりすることもありますね。野外研修施設では、火を起こしてバーベキューをしたりカレーをつくったりすることで、思考を変えるのに役立ちます。研修の一環として使用することも多いですが、1日3食、食堂で食べると飽きてしまうから、という配慮でもあります」

過去から学ぶ事故の歴史展示館

実習を行うエリアも壮大なスケールだ。屋外に設けられた「実習線」には、実物同様のホームや線路、電気配線設備、トンネルなどを設けている。実習棟にも、新幹線電気車実習室や乗務員シミュレーターといった実習施設が整う。

また、実習棟の1階には、昨年10月に拡充した「事故の歴史展示館」がある。そのエントランスには、「安全綱領」と磨耗した車軸が展示されている。

「『事故から学ぶ』『事故を感じる』『安全を心に刻む』ということを目的に開設しました。事故を身近に感じる機会が減りましたが、過去の事故が風化することがあってはなりません。過去の事故を知り、事故の重大さを体感することで、危険に対する嗅覚は常に磨いておく。そのための大切な場所ですね」

展示館は「事故から学ぶ」「安全の原点」「列車火災」「車両管理・設備管理」「ホーム・踏切」「自然災害」「労働災害」などのブースに分かれ、それぞれに関連する事故の概要がパネルで展示されている。サイネージにより映像や音声ガイダンスでも学ぶことができる。

「サイネージの内容は研修に応じて、講師が自由にカスタマイズして使うことができます。あらゆる過去の事故に関する資料を集めていて、2014年に京浜東北線での脱線事故があった際の車両など事故車両も展示しています」

「事故の歴史展示館」は同社の安全への思いをあらためて感じさせてくれる、そんな研修施設である。

ワーク&ラーニングスペース最前線 プログラム編日本生活協同組合連合会主催「生協人共創塾」in コープこうべ「協同学苑」

2019 3-4月号のこのコーナーに掲載したコープこうべの研修施設「協同学苑」では、2018年から日本生活協同組合連合会主催の「生協人共創塾」という、全国の幹部候補者を一堂に会した研修が行われている。

第二期となる2019年は5月22日~24日にスタートを切り、7月~来年2月にかけて大阪・沖縄・東京と場所を移しながら、1回につき3~5日間で様々なことを学ぶ。

全国各地から集められた幹部候補者の心をひとつにする方法や考え方を垣間見られる1コマを紹介したい。

取材・文=竹林篤実、編集部

コープ、パルシステムなど、全国の生協関連組織から受講生が集う共創塾には、次の3つの目的がある。①次世代の幹部候補人材への変革型リーダー育成、②将来の経営幹部の育成支援、そして③全国生協の幹部候補同士のネットワークづくりだ。全5回のプログラムには、マーケティングからリーダーシップ育成まで多種多様な内容が盛り込まれている。第1回のテーマは「生協の理念・歴史・ビジョン」。理念や歴史を学びつつ、今後の生協の課題を整理・可視化するのが狙いである。本誌面では第1回のプログラムから、基調講演と2日目の講義、グループワークでの1コマを紹介する。

第1日目講演『生協運動のいま、そして未来へ』―変わる経営、変わらぬ理念―
日本生活協同組合連合会前会長 浅田克己氏

「生協の理念・歴史・ビジョン」をまず語るのは、日本生活協同組合連合会前会長・協同学苑学苑長の浅田克己氏だ。研修棟の一室で講演を始めるにあたって浅田氏は、次のエールを参加者に送った。

「(変革型リーダーとして)変革や成長のチャンスはだれにでも必ず来るから、いつも前向きな姿勢を保ち、訪れたチャンスを逃さず確実につかんでください。諺では『幸運の女神のうしろ髪は短い』と言いますから、とにかく見逃さないこと。リーダー候補として選ばれた皆さんに用意された濃密なカリキュラムで思考力を養うためにも、問題意識を大きくもつよう心掛けてほしい。各生協のデータから学び、事業構造を考える機会としてください」(浅田氏、以下同)

参加者に強く求められるのは、次代の構造を考え抜く姿勢である。現状の構造を把握したうえで、今後の展開を考える。そのためにはまず、これまでの活動の振り返りが必要だと、浅田氏は日本の生協運動の歴史を語った。

生協運動のこれまでと現状

日本の生協にとってエポックメイキングとなった時期は1970年代である。60年代後半から70年代にかけて大学生協の支援を受けて地域生協の設立が進み、主婦層を中心に市民生協が全国に広がった。

「71年に2.6%だった世帯組織率が80年には8.0%へと急成長しています。その背景にあるのは団塊世代の第2次ベビーブーム。主婦には専業の方が多く、相次いで生協に加入されました」

組合活動にもっとも大きなインパクトを与える要因は常に人口動態の変化だ。1970年に7.1%だった高齢化率は2020年に4倍強の29%に達する。

2017年度末現在、生協の総事業高は約2兆8,400億円、うち宅配が1兆7,900億円、店舗が9,000億円となっている。宅配のうち約7割が個配、経常剰余率は1.56%である。前年比伸び率はほぼ横ばいで、改革は急務だ。

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