J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年05月号

OPINION1 40 代が分かれ道! 「働かないオジサン」は なぜ生まれるのか

ベテラン社員の中には組織の要として活躍する人がいる一方、モチベーションが低下してしまう人がいる。
中年期以降の男性、そして女性が「いい顔」で働き続けるには。
数多くのビジネスパーソン、人事部の実態を取材してきた楠木新氏に話を聞いた。


楠木 新(くすのき あらた)氏
楠木ライフ&キャリア研究所 代表
神戸松蔭女子学院大学 人間科学部 非常勤講師

1954 年生まれ。京都大学法学部卒業。生命保険会社に入社し、人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長などを経験。大阪府立大学大学院でMBA 取得、関西大学商学部非常勤講師を務める。50 歳より会社勤務と並行しながら、執筆活動を開始。多数の会社員から得られた情報を基に、「働く意味」を問う著書を多数発表。2015 年に定年退職を迎え、現在も精力的に取材、執筆活動の他、企業等で講演・研修を行う。代表作に『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(東洋経済新報社)、近著に『定年後―50 歳からの生き方、終わり方』(中央公論新社)がある。

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=楠木氏提供

危機にさらされる40代後半

「仕事へのやる気が感じられない」「会議の発言は評論家顔負け」「『これやっておいて』と、自分の仕事を押しつける」「本部長がいる時だけ妙に張り切る」―。

どの職場にもいる「働かないオジサン」は50 代に多いが、その予備軍が登場するのは40 代後半の世代である。

40 代といえばまだまだ働き盛りだが、半ばを過ぎれば自らの出世レースの行く末が見えてくる。「このまま行けば、オレは部長にはなれないな」「50代で関連会社へ出向だな」と、自分の将来に当たりをつけるようになる。

50 代になっても出世街道を走り続ける人は、幹部候補の一部の人たちに限られるだろう。仕事そのものに魅力を感じている人は別だが、昇進が大きなモチベーションになっている人にとっては、40 代半ばで先が見えてしまうことは結構つらい。

戦後から続く日本型の雇用システムは完全に形を失ったわけではない。職務よりも役職に価値を置き、「栄転だ」、「左遷だ」と、定期異動のたびに一喜一憂するのが、日本のサラリーマンだ。

とはいえ、たとえ意欲を失っても40代の転職は多くの社員にとって現実的ではない。家のローンはまだまだ残っているし、子どもがいれば進学を控え、ますますお金がかかる時期。会社に在籍していさえすれば、給料は毎月それなりに入って来る。「若い頃に安い賃金で汗水流して働いた分の見返りを貰わなくては」―というわけで、定年退職まで消化試合をこなそうと考えるオジサンがどっと増えるのだ。もちろん、男性に限った話ではなく、女性がやる気を失うこともあるだろう。

働かないオジサンを生む仕組み

念のために言っておくが、「働かないオジサン」といっても、自らやる気を出さないタイプは少数派だ。むしろ、働く意欲はあってもそれに応えられる仕事や活躍の場がない、というケースが多い。

彼らが生まれる背景には、日本特有の組織構造が関係している。図1は、ある程度以上の規模の企業に決まって見られる、ピラミッド型の階層組織だ。最近はIT企業をはじめ、経営と現場の距離が近いフラットな組織も増えてきたが、「三角形の高さが低くなっただけで、ピラミッド型であることに変わりはない」という会社も多い。

この構造を頭に入れたうえで、今度は図2を見てほしい。年次が経つにつれて「働かないオジサン」が発生する仕組みを、ややデフォルメして示したものである。新卒で入社した社員は、40歳前後まで評価は固まらず、ほぼ横一列で競争している。だが40 歳を過ぎ、各社員の評価が固まってきた頃にある事実に突き当たる。

ポストが限られているのだ。会社は採用した同年次の社員のうち、評価の高い社員から課長職に順次昇進させる。あぶれた社員は、出世レースを棄権せざるを得ない。

下の年次の集団が、後ろにつかえているので、40 代半ばになると敗者復活の余地は限られる。一緒に仕事をした上司が出世して引き上げてくれるか、病気や事故、不祥事などで上位職の椅子が空くのを待つしかない。要はいずれも他人頼みなのである。

さらに、部長、取締役と上位職になればなるほどポストの数は少なくなるので、いずれかの時点で出世街道からコースアウトしてしまう。

背景にある“能力平等主義”

コースアウトする社員が出てくる背景には、やはり日本独自の雇用システムが関係している。

特徴の1つは、「新卒一括採用」だ。図2のように、中高年になれば、いずれポストが足りなくなることはあらかじめ分かっている。高度成長期には、役職やポストが拡大したので多くの社員が一丸になって仕事に取り組めたが、昨今の低成長の時代にはフィットしていない。

特徴の2つめは「同期」という仕組みである。同じスタートラインに並んだ新人たちは、新入社員研修で同じ釜の飯を食い、「同期」としての仲間意識を育んでいく。そして配属後は、互いをライバルとして意識するようになる。

会社は、「鏡餅」のように入社年次ごとに集団を積み重ねる。その集団ごとに評価が高い順からグループ分けを行い、序列を決めていく会社も少なくない。だから定期異動が発表されると、みんな真っ先に同期の異動が気になるし、同期から遅れを取ると不安になる。

面白いことに、この「同期」という言葉は雇用契約にも就業規則にもないにも関わらず、会社側の人事評価のベースになっている。同時に社員側は同期との比較で自身の評価を判断する。

そしてこれらの日本型の雇用システムの根本には、各社員の専門性やスキルの差にそれほど着目しないという、ある種、“ 能力平等主義”的な考え方が横たわっている。新卒一括採用や同期はこの考え方をベースに成立している。年功序列を生み出す要因の1つでもある。

社員と仕事を結びつける際に、能力や専門性、スキルを重視する欧米とは異なる考え方だ。もちろん欧米の企業には、日本における「同期」の概念は存在しない。

「もう一人の自分」をつくる

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