J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2018年03月号

寺田佳子のまなまな 最終回 裁判傍聴芸人 阿曽山大噴火さんに聞く 「自然体」で磨く個性とキャリア

最終回に登場いただいたのは毎日、東京地裁に“通勤”する阿曽山大噴火さん。
人知れず行われる「B級裁判」に魅力を見いだし、傍聴し続けること約20 年。
取材をネタにお笑い、著作、講演と活動の幅を広げています。
ユニークなキャリアはいかにして積み上げられてきたのでしょう?
「個の時代」を生き抜くヒントを探りました。

阿曽山大噴火(あそざんだいふんか)氏
本名、阿曽道昭。1974 年生まれ。月曜日から金曜日の午前9 時~午後5 時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトで連載を持つ。共著に『B 級裁判傍聴記』(創出版)、著書に『裁判狂事件簿 驚異の法廷★傍聴記』(河出書房新社)など多数。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
インストラクショナルデザイナー、ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(JMAM)など。https://www.facebook.com/InstructionalDesignConsulting/

川の流れに身をまかせ

今回のまなまなのお相手は、裁判傍聴歴19 年の、阿曽ちゃんこと阿曽山大噴火さんである。ニュースや新聞で伝えられることもなく、傍聴人も下手すりゃゼロの、人知れずひっそりと行われている小さな裁判を取材して、そこで繰り広げられる人間模様や、関係者の“珠玉の迷言”を拾いあげ、心温まるお笑いネタにする、日本で唯一の裁判傍聴芸人だ。

ファンのひとりとしてはぜひ、阿曽ちゃんの類い稀なる“傍聴力”の秘密と、“金髪にヒゲ、そしてスカート”というファッションへの“こだわり”がお聞きしたかったのだが……。

意外なことに、子どもの頃から「ナニがナンでもこうしたい!」という熱いタイプではなかった、という阿曽ちゃん。専門学校を卒業後、就職したTV番組制作会社を1年ちょっとで辞めた理由も、
「遅刻しそうになっちゃったので」。

なんとも気弱な言い訳である。

とりあえず始めたバイトの後で、ちょくちょく足を運んだのが「お笑いライブ」。ある日、その会場で、「オーディションの参加者募集」のチラシを目にして、ふと考えた。

「ふ〜ん、トークライブみたいなものかなぁ。芸人さんと話ができるかもなぁ」

というわけで、オーディション本来の目的とは少々ズレた期待を胸に、会場にやってきた阿曽ちゃん。他の参加者たち、つまりお笑い芸人の卵たちが全力で自己PRし、とっておきのネタを披露しているのを見て、思わず、「みんな、すごいなぁ」とひたすら感心した。

まるで、他人事である。

しかし、その控えめな態度が良かったのか、はたまたヘタに“染まってない”感じがウケたのか、理由は定かではないが、阿曽ちゃんはそのオーディションに合格してしまう。

それから、「週1日のネタの練習と週6日の電話番」の毎日が始まった。3カ月ほどして新人ライブで舞台デビューも果たしたが、
「初めての舞台で緊張したかって?う〜ん、覚えてないんですよねぇ。これ、まずいですよねぇ」
と、これまた「ナニがナンでもウケたい」とは思わなかった無欲の初舞台。何はともあれ、「川の流れに身をまかせる」ように、お笑い芸人としてのキャリアがスタートしたのである。

裁判傍聴芸人誕生!

さて、「週6電話番」を淡々とこなして2年ほどたった頃、そのルーティーンを破る事件が起こった。あの「オウム裁判」である。

事務所の代表が執筆していた雑誌の連載でその裁判を取り上げることになり、傍聴券を手に入れるために若手芸人が駆り出された。

運良く傍聴券が当たった阿曽ちゃん、いきなり“マスコミが殺到する注目裁判”を傍聴することになって興奮したのかと思いきや、
「電話番よりは、いいなぁ」
と、まことにユニークな選択基準で、東京地裁で一番大きい104 号法廷に入った。

で、どうでしたか、人生初の傍聴席は?

「こんなに人がいるんだ、ってびっくりしましたね。裁判官が3人も並んでいるし、警備員もいっぱいいるし」

さすがに裁判官は分かったが、
「こっちにいるのは誰だ? あっちにいるのは誰だ?」
と“目が点”状態だったという。

今にして思えば、検察官であり、弁護人であり、被告人であり、書記官であり、速記者であり、事務官であったのだが、当時は、とにかく誰が誰だか分からないたくさんの人が法廷に溢れていて、刑事ドラマ以外では静止画像でしか見たことのない“法廷の人々”が目の前で、
「動いてる!」

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