今週の“読まぬは損”

第199回『M&A年鑑2025』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

2025年度以降のM&Aの動向とは

私は今、日本のビジネスパーソンがもっとも注視しなくてはならない情報の1つが、「M&A」関連情報だと考えている。
自分が講師を務める未来洞察手法を伝える研修プログラムにおいても、実際のM&A事例などを確認しながら、各社の狙いについて、参加者と議論を重ねることもある。

最近も大手自動車メーカーにおけるM&A協議が行われていたことは記憶に新しい。
2025年3月下旬には、大手損害保険会社同士のM&Aが公表されたばかりである。

私自身、国内外のM&A情報の各種サイトを眺めながら、未来に思いを馳せている。
そういう時間を週に1回、少なくとも30分ほど、どれだけスケジュールが詰まっていても、取るようにしている。

今回紹介させていただく書籍の作成にも大きく関わっているストライク社が運営しているM&A Onlineもまさに業界を代表するサイトの1つである。

なぜM&A情報なのか。その理由は、5年後10年後を見据えたときに未来を読み解く“兆し”を教えてくれるからである。

「この会社とこの会社が提携するということは、今後この業界はこう変化していく。そのための予兆に違いない」
「この企業グループがまったく異業種の企業を買収した。顧客基盤を活かして新たな領域に入り込むための号砲に違いない」
「なぜこの会社はこの会社を買収したのだろう。もしかしたらこういう狙いがあるのだろうか」

経済誌紙等でM&A情報を目にした時には、その背景に見え隠れする「狙い」が何かを考える癖をつけておくと良いと思う。
M&Aが盛んな業界では、新たな仕掛けの誕生や社会やテクノロジーの進化に伴う「業界激変」が起こりやすい。

M&Aや事業戦略責任者、担当者のみならず、全部門の皆様にお勧めしておきたい。
もちろん人事担当者の皆様にもお勧めである。

とはいえ、いきなり「M&A情報」と言われても…という方も多いかもしれない。

今回ご紹介するダイヤモンド社の人気MOOKである『M&A年鑑』は、そうした悩みを解決してくれる1冊だと思う。ぜひ毎年目を通しておきたい。

東洋経済新報社『会社四季報業界地図』、日本経済新聞社『日経業界地図』と併せて読むことをお勧めしておく。

本書の構成

副編集長である大澤昌弘氏による「2024年、日本のM&Aを振り返る」に始まり、次の章では「データと傾向で総括する2024年のM&A」のコーナーに入っていく。

同書によれば、2024年の日本国内のM&A件数は993件となり、前年比16.5%の増加となった。
業種別には、サービス業が363件であり、製造業の256件を100件以上上回った。
金額ベースで見てみると、3兆3,884億円であり、こちらは前年比45.9%の減少となり、大型案件の減少が浮き彫りとなった。

「件数と金額の推移」の項目では、2008年以降のM&A件数、金額の経年推移が掲載されており、時代背景を勘案しながら見ていくと、非常に興味深い結果となっている。

2024年金額上位30傑の表で、社名とM&A概要と取引金額が記載されているので、まずはお目通しいただきたい。

今回、インタビューコーナーに登場するのは、小説「ハゲタカ」で知られる真山仁氏、ゴールドマン・サックス証券出身であり、エンタテインメントビジネスで幅広くご活躍の申真衣氏である。
両氏のM&Aに対する考え方、注目ポイントが大いに参考になる。

「M&A主要業界動向2024」のコーナーでは、「自動車」「IT・ソフトウェア」「運輸」「外食・フードサービス」「小売」「コンテンツビジネス」の6分野がクローズアップされており、業界動向を大きく掴むうえでありがたい内容となっている。
そして、いずれもテクノロジーの進化を味方につけた企業が成長している業界ばかりである。

本書の39ページ以降は、実に200ページ以上に渡って、2024年日本の上場企業M&Aデータの一覧が大きく12業種別に掲載されている。

まずは、興味のある業界からざっとお目通しいただきたい。
気になる事例があれば、Webサイトや生成AIなども活用しながら、深堀りして調べてみるのもよいと思う。
1ページあたり6~7事例が紹介されている。

M&A情報を見る癖をつけるための読んでおきたいMOOK

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 2024年の日本のM&Aトレンドについて、データを参考に広く俯瞰する
  2. 今後激変する可能性の高い業界の兆しを探す
  3. 並行して、未来の産業の変化を予見してみる
  4. 上場企業M&Aデータから事例をピックアップしながら、「なぜこのM&Aが起こったのか」を考えてみる

ちなみに最新版が発刊されると、前年版についても改めて見直すことにしている。
定点で比較すると、傾向の変化がよくわかる。
データはやはり比較が意味を持つ。これが相当大事だったりする。

M&A事例を時間の許す限り眺めていると、いろいろな発想が浮かんでくる。

AIの影響やテクノロジーの進化が世界の、そして日本の産業構造を大きく変えていくことは想像に難くない。
あと10年もすれば、今はまだないビジネスもいろいろと登場してくるであろう。
未来の傾向を青田買いしながら、自社に足りないピースをM&Aを通じて埋めていく、強化していく動きには拍車がかかるに違いない。

ちなみに私は業界の垣根を超えたM&Aが増加していくことを前々から予想している。

新規事業や新サービス、そして新販路の展開を仕掛けるのであれば、そうした知見を有している企業と連携してしまった方が、絶対にスタートラインに早く立つことができる。

本書を通じて、ビジネスシーンの未来にぜひ、思いを馳せていただきたいと思う。

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