今週の“読まぬは損”

第200回『AI分析でわかったトップ5%社員の読書術』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

NO読書、NO LIFE?

長く生きていても、知らないことは数多く存在する。
むしろ、世の中は知らないことだらけである。当たり前のことかもしれないが。

なるべく多くのことを学ぶために、1日1冊は新しい書籍に目を通すということを、かれこれ30年以上続けてきた。

幼少の頃から読書家だったのか?とよく聞かれるのだが、全くそんなことはない。学生時代は部活動に注力しており、大学に進んでもアルバイトに明け暮れていたというのが正直なところだ(ただ、大学時代に出会ったゼミの教授が素晴らしい方で、今の仕事ができているのは間違いなくその先生のおかげである)。

社会人キャリアは営業の仕事で幕を開けたのだが、顧客が自分の話(商品説明)をつまらなさそうに聞いている姿を見て、さすがにこれはどうにかしなくては、と真剣に思い悩むようになった。

どうすればビジネスパーソンとして成長することができるのかを熟考した結果、新しい知識を貪欲に吸収するために、外れがあっても構わないので、書籍を読みまくろうと固く誓った。まだインターネットもなかった時代の話である。

まさか自分のような典型的な3日坊主が30年以上もこの習慣を続けられるとは思ってもいなかった。

2025年も4月に入り、新社会人と思しき方々をたくさん見かけたことも影響してか、ふとすっかり記憶から遠のいていた昔のことを思い出した。

時は流れ、今は電子書籍で読めるタイトルも増えた。生成AIは、書籍の要約を普通に支援してくれる。便利な時代になったものである。

それでも、今でも週に一度は大型書店に出向き、リアル書籍のラインナップを確認している。やはり観察は重要であり、頭の中を刺激するためにも、やらなくてはならない。

常に、人生は勉強の連続であり、様々な学びを与えてくれる絶好の教材が「書籍」だと信じている。

さて、今回イチオシの書籍としてご紹介したいのが、常に著者買いをしている越川慎司氏(クロスリバー代表取締役)による注目の新刊「トップ5%シリーズ」第5弾となる「読書編」である。
「越川氏×読書編」とくれば、もはや読むしかない。

「忙しくて読書する時間なんてない!」そんな皆様にぜひ、お読みいただきたい1冊である。
ちなみにトップ5%に入る優秀な社員は年間で約43冊の本を読んでいるとのことである。

本書の構成

本書は序章も入れると、全6章で構成されている。

序章では、トップ5%の読書の傾向について、明らかにされている。
「毎月コンスタントに読書を継続している」「休みに多読する」。大きくはこの2つのパターンに分かれる。
「忙しいから読書をしている」と答える方が多いのも頷ける。私も全く同じ考えである。

オーディオブックの利用が多いのも、トップ5%の特徴である。
オーディオブックは長距離移動の多い海外での人気が高いが、この序章を読んで、オーディオブックを積極的に使っていくことを私も決めた。

我が家にも常に未読の本の山があるのだが、「読み残し」に焦るのではなく。「知識のゴールドラッシュ」と見なす。なるほど、と思うわけである。ポジティブに捉えなくては。

第1章:読書を習慣にできない理由

本章では、5つの理由を挙げながら、読書を習慣化できない要因を分析している。
ちなみに買った本を横積みではなく、立てかけておくと未読率が28%も下がるとこのこと。
ぜひ、試してみていただきたい。

第2章:5%社員のユニークな本選び

ここでも5つのユニークな書籍選びのコツが紹介されている。
たとえば、「セレンディピティ5対2の法則」では、自分の専門分野や対応すべき分野を5冊、残りの2冊は偶然の出会いや新たな分野の本を選ぶという手法をとる。
偶然の出会いに遭遇するためには、やはり書店に行くことが重要である。
皆様にもぜひ、お薦めしたい。
本選びの残りの4つのコツも、本書でチェックしていただきたい。

第3章:読書は「準備」で決まる

ビジネスはどのような局面でも、準備で成否が決まると思うのだが、読書活動においてもその法則が当てはまるというのが興味深い。
場所と時間を決める、スマホを遠ざける、読書用の服を用意する(!?)、読書休暇を取得する、挫折を克服するための「秘密ノート」を準備する、などなど。

他にも「なるほど」感あふれるトピックが続く。

第4章:今日からできる! 再現可能な5%社員の読書法

「再現可能」というのがまずはありがたい。実に14もの読書テクニックが紹介されている。
一例を挙げると、「選読」「速読」「瞬読」の法則、「右脳」活性化のために「小説」を読む、そしてスキマ時間を見つけるための「ジジジの法則」にもトライしてみたい(何の略かはぜひ、本書にてご確認を)
「小説」をビジネス書ほど読めていないことは、素直に反省しなくてはと思う。

第5章:5%社員は「読後」に差をつける

アウトプットに向けた法則が7つ紹介されている。アウトプットは頭の中の情報の生け簀をつくるうえでも重要である。

特に4番目で紹介されている「二次情報を一次情報にする」テクニックは、生成AI時代だからこそ、非常に重要だと思う。

一般人にも再現性が高いと書かれている「3Iフレームワーク(3I=Information、Insight、Intelligence)」も学んでおきたい。

意外な発見と共に、トップ5%の読書術が学べるバリュー高い1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. トップ5%のパフォーマンスを発揮している方の読書への向き合い方を知る
  2. 自分がやっていないことをピックアップする(実は結構ある)
  3. なぜそういうやり方を採用するのかの背景を探る
  4. アウトプットを意識して、早速実践してみる

トップ5%と形容される方々の読書術は、やはり刺激的な内容であった。

越川氏ご自身は、40代から読書習慣を身に付け、毎年300冊以上を読まれている。
ご自身の試行錯誤の歴史があるからこそ、こうした著書につながるのだろうと感心しながら一気に読ませて頂いた。

もちろん、感心して終わりではなく、本書に書かれている読書術を学び、実践していかなくてはならない。

越川氏の書籍への思いは、あとがきに書かれているので、ぜひお読みいただきたい。
お読みいただくとわかるのだが、あとがきの内容には、勇気が湧いてくる。
巻末には購入特典もあるので、こちらもお楽しみに。

言うまでもなく、本連載読者の皆様に必読の1冊としてお勧めしておきたい。

※越川氏には私が出演しているラジオNIKKEI「グローバルビジネス総合研究所~グロビズ」にもご出演いただいているのでよろしければぜひ、こちらもお聞きください。

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