今週の“読まぬは損”

第197回『50代上等!理不尽なことは「週刊少年ジャンプ」から学んだ』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

50代というボリュームゾーンを知る

2025年1月1日現在、日本の50代人口は1,834万人。
全人口1億2,359万人の約15%を占めている。

日本は世界最速で高齢化が進んでいる国ではあるが、10歳刻みで見た場合、実は当面の間、50代が当面の最大人口ボリュームゾーンである。
ちなみにこの世代は「最後のマス(大量の消費者)」ともよばれている。

かく言う私自身も、50代後半の還暦カウントダウンが近づいてきた1ビジネスパーソンである。

自分が幼少の頃は、もう少し様々な意味で「年老いた」50代の姿を想像していたが、周りを見ていても、意外にまだまだ若いなと感じている。

55歳~60歳の方々を対象とした役職定年制度を導入している企業や機関は多いが、近年、大手企業でも廃止の動きが進んでいるという報道もよく見るようになった。

ここ1~2年、50代社員のキャリアの未来について相談したい、というような案件がなぜか私のような者にも届く。

もちろん、人手不足という課題、シニア層の活性化等、様々な目的があるとは思うのだが、 最大のボリュームゾーンの元気度合いが、日本の未来に与える影響は大きいと考えるようになった。

そうした思いを描くなか、注目の1冊が発刊されたのでぜひご紹介したい。
著者は、リクルートやバンダイ、コンサルティングファーム等を経て、現在は千葉商科大学准教授である常見陽平氏。

私自身、常見氏の著書には前々から興味津々で、やはり著者買いさせていただいているのだが、今回の久々の新刊のタイトルは『50代上等!理不尽なことは「週刊少年ジャンプ」から学んだ』。

50代を取り巻く時代背景やこれからの活躍のヒントに関する「常見さん節」が各所で展開されている。常見氏ご自身も50代になられたばかりのビジネスパーソンである。

読んでいただくとわかるのだが、大切な論考が続々と登場するなかにも、思わずクスッと笑ってしまうフレーズが多数登場する。

50代の方々はもちろん、50代以外の読者の皆様も上司や親世代の“時代背景にあるもの”を知るという観点で、どうかお付き合い願いたい。

本書の構成

この大注目の1冊は、全4章で構成されている。

第1章:50代の憂鬱

ここでは、アラフィフ世代(47~53歳世代)の悩みがつづられている。
鈴木おさむ氏によって世に広がることとなった「ソフト老害」や「就職氷河期」「同窓会」「自己責任」「松井秀喜世代」といったキーワードが登場する。
このキーワードだけで既に興味深いと思われる方が多いのではないだろうか。

第2章:50代の希望

本章以降は、50代世代にとってポジティブな話題が多数登場する。
特に、キャリア形成に関心のある方にとっては、今の職場での「番頭」「経験者」としての立ち位置、そして意外な職業に就ける可能性など、50代がこれからを考える(もちろんさらに若い方々にとっても)ヒントが満載である。
読んでいて「番頭」という役職もありかもと思っている私がいる。

やはり50代が有する30年にも及ぶビジネスキャリアを活かす道は必ずあると改めて考えさせられる。

ちなみに本章最後のコラムにおいて、本書のサブタイトルでもある『「理不尽なこと」はすべて「週刊少年ジャンプ」から学んだ』が登場する。
ジャンプ世代の皆様(私を含めて)には大変興味深い論考が展開されているとお伝えしておきたい。

第3章:50代の処世術

人生100年時代においては、まだまだ中盤戦。
50代ならではの処世術が展開されている。
50代以降の未来年表、未来地図を実際に考えて書いてみることは重要だと私も思う。

「エア転職活動(ゆるい転職活動)「エア移住(これも人生の選択肢として重要)」のススメ等、自身の事情に合わせてトライしてみたい提案が多数登場する

「ネタ帳」は私も日々作っているのだが、後で役立つのでやめられなくなってしまった。
過去の手帳を読み返し、今できることを探す、これもすぐにトライできる。

「評価」よりも「評判」がものを言う。
「評判」を大切にしなくてはならない、確かに実にありがたいアドバイスである。

第4章:50代が生きやすい世の中を!

ここでは生きやすい社会、そして会社になるための提言が展開されている。
50代ビジネスパーソンはもちろん、人事部門の皆様には特に注目いただきたいのが本章での数々の提言である。

特にp.216から始まる「早期退職、役職定年を見直そう」の項、そして、p.223から始まる「ベテランが活躍する会社を立ち上げよう」の項には、未来へのヒントが詰まっている(詳しくは本書にて)

50代ビジネスパーソンの未来の在り方を示唆してくれる素敵な1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 各社においてもボリュームゾーンであろう50代の在り方について、イチ研修講師として今後の向き合い方の参考にさせていただく
  2. じっくり本書と対話しながら、今後ビジネスパーソンが獲得すべきスキルを熟考する
  3. 自分自身も50代の一員として、大いに今後の取り組みの指針とさせていただく
  4. 50代のハートに灯をともすために、本書の考え方を自分の血肉とする

大きな勇気を与えていただいた本書にお礼を言いたい、というのが、読後の正直な感想である。

かつて、50代は60歳定年に向けて、段々とフェードアウトしていくイメージすらあったのだが、人生100年時代に向かっていくこれからの時代、まだまだ50代というのはキャリアの道半ばである。

個人的には、今よりも未来の方が進化しているイメージを持ちながら、これからもやっていきたいと思っている。その方がきっと楽しいに違いない。

私が出演しているラジオNIKKEI「グローバルビジネス総合研究所」(毎週木曜昼12:00~)にも、2025年1月、常見氏にご出演いただき、興味深すぎる話を直接聞かせていただいた(とても30分では時間が足りなかった…)。

よろしければ、ぜひ聞いてみていただきたい。
URL: 50代上等! 理不尽なことは「週刊少年ジャンプ」から学んだ

「今日が人生で一番若いです。行こうぜ、50代の向こうへ!」

繰り返しになるが、50代のビジネスパーソンはもちろん、それ以外の世代の方、そして、ベテラン社員との向き合い方についてお考えの人事部門担当者の皆様にも「未来」のために是非お読みいただきたい熱い1冊としてお勧めしておく。

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