今週の“読まぬは損”

第212回『スタンフォード式 最高の休み方』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

休み方の習得こそ、最高のパフォーマンス戦略

1990年に社会人になった私にとって、残業や休日出勤はある意味、世の中における当たり前の文化だった。
休日出勤がカッコいいと思っていた時代もあった。
まさに若気の至りである。

「週休3日制」の導入企業増加や各業界における労働時間規制など、35年前には考えられなかった、働き方に影響を与える変化も巻き起こっている。

世の中の変化と共に、近年、「休息本」が増加している。
やはり多くのビジネスパーソンが「休み方」に注目しているようだ。

2025年ビジネス書ベストセラーにもなった『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(越川慎司著/クロスメディア・パブリッシング)はその代表例である。
こちらもぜひ、お読みいただきたい。

そして今回ご紹介させていただくのは、ビジネスパーソンが「未来の自分」のために読んでおきたい素晴らしい1冊である。

タイトルは『スタンフォード式 最高の休み方』。

著者は、スタンフォード大学認定コンパッションアンバサダー(日本人初)であり、休息戦略家の鈴木亜佐子氏。ベストセラー『スタンフォード式 疲れない体』のプロデュース担当でもある。

巻頭に出てくる「あなたはちゃんと休めていますか?」というフレーズ。
この問いに、「うーん」と思わず考え込んでしまった。

「実は成果を出す人ほど、よく休んでいるのです」

何となく理解はできるものの、実生活では実践できていないなあ……。

そのように感じる方にとっては、まさにうってつけの1冊である。

本書の構成

本書は、全5章で構成されている。

第1章:なぜ私たちは休めないのか? ~休むことを「戦略」として考える~

日本型もさることながら、著者ご自身の経験も交えた「シリコンバレー型」の休まない文化の記述も興味深い。
「プレゼンティーズム(出社していても心身不調)」「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の紹介を経て、成功者から学ぶ「休む力」そして「セルフコンパッション(自己への思いやり)」が紹介されている。
本稿を読んで「夕食後の皿洗い」のモチベーションが上がったことも報告しておく(詳しくは本書にて)。

第2章:「時間」ではなく「エネルギー」を管理する~ハードワークが持続するためのヒント~

ここでは、ビジネスパーソンのパフォーマンスに影響する4つのエネルギーとそれらに作用する対応策がエビデンスと共に詳しく解説されている。

・身体的エネルギー(基礎体力、睡眠の質)
・感情的エネルギー(ストレス耐性、感情コントロール)
・思考的エネルギー(集中力、意思決定能力)
・精神的エネルギー(目的意識、モチベーション)

この4つのエネルギーに関して、世界の有力企業が社員研修を実施しているというのも、今の時代感を象徴している。

仮眠の取り方をはじめとして、休息を戦略的に捉える考え方が事例を交えていくつも紹介されており、すぐに取り入れてみたいと感じるものも多いと思う。

シリコンバレーの「STOP」手法の4ステップ、そしてデフォルトモードネットワーク(DMN)
は個人的にも特に注目した内容である。ぜひご確認いただきたい。

第3章:科学に基づく「休む技術」~ハイパフォーマンスを実現する休息法~

本章を読みながら、自身のパフォーマンスが今一歩な時の休息の状況を思い起こしてみると、改めて「休む技術」の重要性に気づかされる。

多くの眠らずに深い休息を取る「NSDR(Non Sleep Deep Rest)」、「HIIT(高強度インターバルトレーニング)」、いずれも早速取り入れてみて欲しい。もちろん私自身も取り入れたい。

第4章:自分をいたわる7つのセルフケア~疲れや不調を持ち越さない習慣~

ここでは、「身体的セルフケア」「思考的セルフケア」「感覚的セルフケア」「感情的セルフケア」「社会的セルフケア」「創造的セルフケア」「魂的セルフケア」の7つの項目について解説されている。

いずれも重要なことは間違いないのだが、生成AI時代において「感覚的ヘルスケア(あえて刺激を減らし、脳を意識的に休ませる)」の項で紹介されている「ブレイン・ロット(脳ぐされ)」は非常に気になる現象である。

そして、「魂的セルフケア」は「日常の中でふと立ち止まり、『自分はどうありたいか』を振り返る機会をつくる」という考え方なのだが、つい目的を失いがちになる今の時代において、全ビジネスパーソンにとって、未来のキャリア形成のためにも特に重要だと感じている。

第5章:休日を「ちゃんと休む」技術~週末と休暇で人生を再起動する~

「金曜午後は基本オフモード」がアメリカの常識だとすると、日本は果たしてどうだろう。
明日から休みだ、金曜午後は仕事の追い込みだ、もう一丁頑張ろう、と感じている人も多いのでは。
かくいう私もその思考である。

本章を読んで、最大のパフォーマンスを発揮するための「金曜の午後」のあり方を痛感させられた(反省させられた)。
本章では、土日の過ごし方についても、いろいろと提案してくれている。
「未来への投資」につながる土日とは。本書は今までとは違う自分に出会うきっかけを与えてくれる。

人生そのものを考えさせられる自分の未来につながる教科書とも言うべき1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. ビジネスリーダーの「戦略的な休息」の秘訣を学ぶ
  2. 最新の論考を通じて、特に今までの自分の対局にある世界観を知る
  3. 一気に全てをクリアできなくても、少しずつ本書の内容を実践してみる(現在、絶賛実践中)
  4. セルフコンパッション(自分への思いやり)の考え方を自分に浸透させていく

冒頭に書いた通り、近年様々な休息本が発刊されており、多くのビジネスパーソンが「休みの過ごし方」に課題を感じていることは間違いない。
もちろん私もその1人である。

最近、近所の少し大きめの公園に出向き、緑や鳥を眺めながら、ボサッとする時間を週に1回程度、あえてつくるように心掛けている。

あくまでも一例だが、本書を読んでいて、そのルーティンは間違っていなさそうだなと感じているところである。

本書は自身の「最高の休み方」のプロデュースの仕方を多数紹介してくれているが、
自らの前提となる人生にとって大切なことをたくさん教えてくれている。

「立ち止まること」この重要性を若い方々にも本書を通じて感じていただきたいと願う。
もちろん、本連載フリークの皆様にはぜひともお勧めしたい「未来につながる」1冊である。

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