菊池健司氏
- 読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
- 1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。
未来を見据えるうえでも重要なM&A情報
M&A(Mergers and Acquisitions:企業の「合併」と「買収」)のトレンドをキャッチアップしておくことは、ビジネスパーソンにとってとても大切なことである。
なぜなら、未来の兆しを読み解くこができる1つの重要指標だからだ。
あまりこれまで話したことがないのだが、私自身、M&A関連のニュースのみをチェックする時間を毎日5分間必ず確保するようにしている。
「A社とB社が合併する。公式発表ではこう説明されていたが、なるほど、こういうことを仕掛けるつもりなのかな……」
「C社がD社を買収するというこの報道、なるほどこのピースを埋めることで、こういう事業の拡大を狙うのか……」
「E社とF社が業務提携を発表した。お互いの強みを活かせる好取組みに映る。いずれホールディングカンパニーをつくって仕掛けてくるだろう……」
ときには、生成AIの力も借りながら、世界や日本のM&A事例を1日1社ピックアップして、その狙いを読み解くようにしている。
もう長年行っている習慣なのだが、この混迷の時代において、未来の読み解きは様々な場面で使えるので、改めてやっておいてよかったと思っている。
私自身、イチ研修講師として、主に「未来洞察研修」を各社で展開しているのだが、その際に顧客のご要望があれば、「妄想M&A」というプログラムを組むこともある。
概要をお伝えすると、「妄想M&A」とは、仮にGという会社と合併あるいは業務提携を締結したと仮定して、どんなビジネスを仕掛けられるかについて、グループで討議をしてもらうというシンプルな内容だ。
やっていただくとわかるのだが、最初は「うーん」という感じでも、グループで議論していると、段々と意外なビジネスアイデアが湧き出てくる。
「妄想」ではあるのだが、間違いなく、発想転換のきっかけにはなる。
そして、何といっても「妄想」なので、コストがかからないことも利点である。
よろしければ、ぜひお試しいただきたい。
さて、今回はM&Aを話題としているので、本連載リスナーの皆様にご関心をお持ちいただくためにお読みいただきたい1冊を紹介したい。
その名も『M&A年鑑2026』。
M&Aの専門メディアであるM&A Onlineが編著を手掛けているダイヤモンド社の毎年恒例のムック本である。
過去にもご紹介しているのだが、ビジネスパーソン、特に次世代リーダー人材が「M&A」に関心を持つことは必要不可欠だと思うので、最新版が発刊されたこともあり、今一度ご紹介させていただきたい。
本書の構成
大きくは、以下のパートで構成されている。
随所でコラム的に「M&Aの変遷」「M&A用語集」なども登場し、読者の理解を助けてくれる構成となっている。
●「2025年、日本のM&Aを振り返る」
本パートにおいては、M&A Online副編集長である大澤昌弘氏が、企業価値向上時代において、さらなるM&A活況傾向が2026年も続くかについて、興味深い論考を展開している。
●データと傾向で総括する2025年のM&A
タイトル通り、ここでは、ビジネスパーソンが押さえておきたいM&Aトレンドについてデータを通じて学ぶことができ、10件の重要トピックスが紹介されている。
日本国内における2025年のM&A件数は1,114件(前年比12.1%増)。
公表金額は9兆6,368億円(前年比2.72倍)となっている。
この数字だけでも、M&Aの拡大傾向が見て取れる。
●毎年恒例の特別インタビューコーナー
今回は、サイボウズ株式会社代表取締役社長である青野慶久氏、そして、株式会社丸の内キャピタル代表取締役社長藤田正敦氏、取締役CIO福崎昇平氏へのインタビューがそれぞれ2ページずつ掲載されている。
経営者視点でM&Aが語られており、両社ともにぜひ読んでいただきたい。
●M&A主要業界動向2025
今回取り上げられている業界は、「自動車」「IT・ソフトウェア」「小売」「外食」「銀行」「建設」の6業界である。いずれもM&A視点における注目業界ばかりである。
顧客の業界に当てはまる方はぜひピックアップしておかれると良いと思う。
●全網羅 2025年日本の上場企業M&Aデータ
タイトル通り、上場企業のM&A個別案件の一覧表が実に170ページ以上に渡って展開されている。
取り上げられているのは「水産・農林業」「鉱業」「建設業」「製造業」「電気・ガス業」「運輸業」「情報通信業」「商業」「金融・保険業」「不動産業」「サービス業」「その他」の全12業種である。
ボリューム感満載ではあるが、こうしたデータを眺めながら、各社の狙いを想起したり、未来に向けてどのようなシグナルが発信されているのかを見るといいだろう。
まずは、気になる業界から読み進めていただきたい。
M&A動向を1冊で読み解くことができるありがたい定番ムック
本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。
- 2025年のM&Aトレンドを復習として振り返る
- 2026年以降のビジネスシーンの変化の兆しを本書から探す
- なぜこの会社がこの会社を子会社化するのか、売却するのか等々の研究材料とする
- 意外な動きがないかのチェックリストとする
おそらくM&Aの世界においては、「異業種同士の意外な連携」というのがおそらく今後のキーワードになると思う。
日本経済新聞等をお読みの方は、M&A関連情報は定期的に見ておかれることをお勧めする。
キーワードを意識しておけば、記事が目に飛び込んでくる(いわゆるカラーバス効果)。
顧客の業界でM&Aが起こればもちろん自社にも影響が出る可能性は高い。
もちろん自社の業界でM&Aが起これば、言わずもがなである。
自分が普段見ていない業界で何が起きているのかを見ておくこともこれからの時代は大切。
『会社四季報業界地図』(東洋経済新報社)、『日経業界地図』(日本経済新聞出版)等と組み合わせてお読みいただけると、さらに理解が深まる。
多くのビジネスパーソンに参考にしていただきたいありがたいムック本として、お勧めしておきたい。

