今週の“読まぬは損”

第193回『世界の一流は「休日」に何をしているのか』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

仕事にも人生にも大きな影響を与える休日の過ごし方

日本生産性本部が毎年公表している「レジャー白書」の内容には毎年注目している。
2024年版によれば、仕事よりも余暇を重視する方は年々増加しており、2023年は全回答者の66%近くが「余暇重視」と回答している。
今の「時代感」をよく表しているデータと言えよう。

日本生産性本部「レジャー白書2024」

バブルの頃に社会人になった私は、当時同僚と「どちらが多く終電で帰ったか」を競い合ったり、土日に出勤することをなぜか「カッコいい」と思ったりしていた。
もう30年以上も前の昔話である。

一応、体育会系で育ってきた者として、体力はそれなりにあったので、休日はスポーツイベントに参加したり、遊びに行ったり、今思えば、よく動いていた。
ちなみに当時はまだインターネットもSNSもなく、そうしたツールを使った時間の使い方はできなかった。
また、よく「寝だめ」もしていた(のちにそれはあまり効果がない、ということを知ることになるのだが……)

やがて年月を経て、今日に至るのだが、今は休日のうちの1日はなんだかんだで残務整理を行い、そして読書タイムを楽しむ、もう1日はなるべく外出することも含め、ゆったりと時を過ごすというのが個人的にはルーティンとなっている。

ちなみに読者の皆様は、余暇時間をどのようにお過ごしであろうか。

海外のエグゼクティブは、オンとオフをしっかり使い分けていて、仕事で圧倒的な成果を残すのはもちろんのこと、一方で長期休暇もしっかり取得し、人生を謳歌しているとよく聞く。

休日の使い方が、生活はもちろんのこと、仕事も人生そのものも充実させていくことは間違いない。
そこで今回ご紹介するのは、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)等のベストセラーで知られる越川慎司氏の注目の新刊である『世界の一流は「休日」に何をしているのか』である。

やはり、「世界の一流」の時間の使い方は予想通り、いや予想以上に戦略的であった。

本書の構成

「はじめに」の項で登場する最初のフレーズが「あなたは、疲れていませんか?」という言葉である。思わず、疲れていますと本に向かって答えてしまった(苦笑)。

読み進めていくと、疲れが抜けないのは「休み方」にも原因があるという言葉が目に飛び込んでくる。
「正しい休み方改革」の解説が第1章から始まる。

越川氏が代表を務めるクロスリバー社の調査によれば、休日の過ごし方において、日本のビジネスパーソンが「一人時間を大切にする」のに対し、欧米のビジネスパーソンは「友人や家族とアクティブに過ごす」傾向があるとのこと。

第1章:日本人は、なぜ疲れていても休めないのか?

本章では、コロナ禍の後遺症の蔓延や日本企業特有の「個人依存」傾向などの課題が分析されており、日本のビジネスパーソンが「休まない」要因を明らかにしている。

第2部:ここが違う! 「世界」の休日と「日本」の休日

本章では、タイトル通り、世界と日本の休日の過ごし方に関する意識の違いが明確に記されている。著者ご自身のご経験(ハーレー体験等々)と照らし合わせての意識の変化についても頷くポイントが多い。

「日本人は疲れてから休み、世界の一流は疲れる前に休む」というくだりも「なるほどポイント」である。世界の一流はアウトドア等「動」によっても心身のリフレッシュを図っているのだ。
特に「ワーク・ライフ・ハーモニー」の項における5つの実践キーワード、そして<世界の一流が「長期休暇」を取っても仕事に支障が出ない理由>の項は多くのビジネスパーソンにとってこれからの仕事を考えるうえでも学びが多いと思う(詳しくは本書にて)。

第3部:世界の一流は休日に「自己効力感」を高める

本章では、「自己効力感(=自分は目標を達成できるだけの能力を持っている)」という重要キーワードが登場する。

「自己効力感」を高めるための4つのアプローチ手法、休日のリラックスタイムに世界の一流は5つの視点で将来を構想しているというトピックスが紹介されている。

世界の一流は「芸術鑑賞」と「読書」を重要視しているというトピックで出てくる著名人エピソードは、イチ読書家としてもうれしい限りである。

第4部:「土曜」と「日曜」を戦略的に使い分ける

本章では、世界の一流による土日の効果的な使い分けについて、解説されている。
「休養」と「教養」を手に入れるために土日をどう使い分けるか、ここまで考えてはいなかった自分からすると、やはり本章も「頷き」ポイントが多かった。

「土曜=チャレンジデー」「日曜=リフレッシュデー」
実は「土曜」をどう使うか?が有効な休日の使い方の鍵を握る。
改めて、戦略的な休日の過ごし方を実践したいという思いを強くした。

第5章:休日に「1日7分」の新習慣

終章となる本章では、「1日7分」という短い時間を活用する新習慣が3つ紹介されている。
新習慣②の「ジャーナリング(=頭に浮かんだことをランダムに紙に書き出す)」を早速始めてみた。確かに気づきが多い。

本章も興味深い論考が続くのだが、最後に出てくる人間の4種類のエネルギーの話題は、これから特に意識しておきたいポイントだと考えている。

「世界の一流」から未来のための「時間の使い方」を学び取るための1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 「世界の一流」の休み方の全体像を学ぶ
  2. 自分の休日の過ごし方を見つめ直し、次に進むために心と思考を整える(今でも週末は仕事がはかどると思っている自分がいる……)
  3. 著者の言われる通り、まずは早速実践してみる
  4. 「好循環サイクル」を実感できるまで、継続的にトライしていく

私自身がこれまで接してきた尊敬すべき経営者の方や超人のようなビジネスパーソンも、やはり休日の過ごし方の達人は多かったようにいま改めて思う。

本書を通じて、その秘訣を体系立てて教えていただけることは実にありがたい。
もしかしたら、役員研修等で「エグゼクティブのための優れた休日の過ごし方」のようなプログラムが登場するかもしれない(ちなみに「休日の過ごし方」的な研修は既に存在している)。

2号前の本連載で紹介した『ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』(西村栄基著)も併せて読んでみてはいかがだろうか。

成長のためには、どこかで多少無理をしてでも頑張らなければならないタイミングはあるように思う。
一方で、本書で紹介されている「休日の過ごし方」を実践できれば、間違いなく平日の高パフォーマンスにつながる。

本連載フリークの皆様であれば、必読本であることは間違いない。
「未来」のために、ぜひともお読みいただきたい1冊である。

この記事は全文公開しています。
無料会員登録すると、
全ての記事をお読みいただけます。
2,500本以上の人事・人材開発専門記事が読める!
無料で読み放題 会員登録する
会員の方 ログイン