今週の“読まぬは損”

第204回『もうけの仕組み ビジネスモデル大図鑑 404社を徹底検証!』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

ビジネスリーダーは絶対に理解しておきたい「儲けの仕組み」

私が勤務する日本能率協会総合研究所のマーケティング・データ・バンク(MDB)には、年間契約を頂いている企業の皆様から、日々、様々な調査依頼が寄せられている。

「新規事業検討のために、2035年の成長産業を調べたい」
「当社の製品の新用途を検討するために、特定業界の市場予測データを集めたい」
「新中期経営計画を策定するために、2040年の社会の変化について描かれたレポートを幅広く集めたい」
「特定分野の10年後20年後のテクノロジーの進化について研究したい」
「新人事制度を検討するために、他社の先行事例を確認したい」

本連載をご覧いただいている皆様も、様々な情報ニーズをお持ちかと思う。

さて、ここで少しだけ昔話にお付き合い願いたい。

私が社会人になったのは、1990年に溯る。
気がつけば35年もの時間が経過しており、驚くばかりなのだが、当時を振り返っても、特にコンサルティングファームや金融機関の方々が先を争い調査をしていたのは、「各業界のもうけの仕組み」「注目企業のもうけの仕組み」であった。

実は令和7年になっても、その光景は大きくは変わらない。
つまり、「情報価値」で勝負している業界の皆様は、昔も今も、時代は流れても、「もうけの仕組み」を調査することの重要性をよくわかっておられるのだと思う。

今や、業種業界に関わらず、「もうけの仕組み」を調査する方は増加しているし、私もお勧めしている。

薄利多売なのか、利幅が厚いのか、業界平均はどうなっているのか、あの企業はなぜ業績がいいのか、なぜ海外のあの企業は年率数百%も成長できるのか、あの企業はなぜ苦戦しているのか……。

成長している企業には、確固たる「もうけの仕組み」が存在する。
業種業界の垣根を越えて、他業界の「もうけの仕組み」を学び、自社ビジネスの参考とする、この動乱の時代において、業績順調な企業の「もうけの仕組み」を調べ、未来の読み解きに活かす。こうした発想はさらに重要度を増していくだろう。

そこで今回ご紹介したいのが、東洋経済新報社から本年度新たに刊行された、その名も『もうけの仕組み』。ついに出た!というのが率直な印象である。

本書は、あのベストセラー『会社四季報業界地図』のチームが執筆している。
それだけでも必読なのだが、さらにビジネスモデル研究の第一人者である早稲田大学教授・井上達彦氏が監修されており、さらにバリューを増している。

本書の構成

大きくは全4章と巻末特集で展開されている。

第1章 取引の図解の基本―ビジネスモデルを理解しよう!

本章では、20ページほどでビジネスモデルの基礎、そして!“9つ”のもうけの仕組みのパターンが解説されている。
井上教授による「取引の図解」はぜひ理解しておきたい。
全体を通じて、井上達彦研究室による企業の「もうけの仕組み」図解が登場する。
さて、貴社の「もうけの仕組み」はどのパターンに該当するだろうか。

第2章 事例で学ぶもうけの仕組み―9つの基本パターンを理解しよう!

本章が最ボリュームゾーンであり、90ページほどで展開されている。
前述の9つのもうけの仕組みにおいて、それぞれ3社ずつ事例が紹介されており、実にわかりやすい。きっと、もっと知りたいという欲求にかられるのではないだろうか。
広く「もうけの仕組み」を俯瞰できる、会社四季報記者によるとっておきの解説が続く。

第3章 注目企業の強さの源泉―ビジネスモデルの組み合わせに注目!

本章では、40ページ強で、21の注目企業のもうけの仕組み解説が続く。
この21社が選定されている意味を考えながら、お読みいただくと良いと思う。

第4章 ランキングで見る9つのビジネスモデルの実力―利益率、ROE、年収で一番強いモデルはこれだ!

本章ではタイトル通り、30ページ強で、営業利益、ROE(自己資本利益率)、平均年収といった指標でビジネスモデルの実力を吟味している。
特に192~195ページの「5.組合せをどう深めるか」は注視してご覧いただきたい。
巻末特集 上場404社のビジネスモデルを独自分析!―9つのモデルのどれに該当?
本章では、日本を代表する404社について、一覧表でそのビジネスモデルがまとめられている。「製造販売モデル」で勝負する企業、意外なビジネスモデルの組み合わせで仕掛けている企業など、とにかく気づきが多い。
言うまでもなく、この一覧表だけでも相当なバリューがある。

世の中の「もうけの仕組み」「ビジネスモデル」を理解しておきたい

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 「もうけの仕組み」「ビジネスモデル」の「型」を理解する
  2. 「もうけの仕組み」「ビジネスモデル」の「組み合わせの妙」を理解する
  3. 企業事例を研究しながら、各社の強さについて、自分が「誤解」していた点があればそれを改める
  4. 「顧客の未来」を考えるための重要参考書と位置づける

本書は何と言っても、業種業界関わらず、俯瞰して学べることが素晴らしい。
元々、過去には『週刊東洋経済』誌面で、「もうけの仕組み」特集が数度掲載されており、大変楽しませていただいた。
その特集の内容もブラッシュアップされて、今回のムックに掲載されている。

また各章の終わりには、井上教授による監修者解説が1ページでそれぞれ書かれている。
(特に124ページ「海外や他業界の会社を分析しよう!」の考え方は大変重要)

2025年8月後半に発売予定の『会社四季報業界地図(2026年版)』と併せて読めば、まずます学習効果が高まるだろう。

そして、気になる企業があれば、ぜひ各社のIR情報も眺めていただきたい。
決算発表の際に自社の強みをどう表現しているか、中期・長期経営計画で何を目指そうとしているのか、有価証券報告書で自社のリスクをどう分析しているか。

きっと、本書は深堀りして研究したい意欲を私たちに与えてくれる。

幹部研修・次世代リーダー研修参加者はもちろん必読。
いやいやそれどころか、全ビジネスパーソンにお勧めしたい、ありがたい1冊である。

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