今週の“読まぬは損”

第189回『日経テクノロジー展望2025 世界を変える100の技術』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

テクノロジーの進化が未来の社会像のヒントを教えてくれる

2024年度もこれから後半戦に突入していくわけだが、いわゆる有力ビックテック企業とも形容されるGAFAM(Google、Apple、Facebook(現meta)、Amazon、Microsoft)は、最近も様々な新サービスを発表して、世の中に刺激を与えている。

Appleやmetaの取り組みを見ていると、いわゆる「空間コンピューティング」関連技術には今後、注目しておいた方が良いと思う。

生成AIが秒進秒歩で進化する今は、GOMA(Google、OpenAI、Microsoft、Anthropic)の時代ともいわれている。
他にも、企業の頭文字による様々な略語が登場しているのだが、テクノロジーの進化による新たなプラットフォーマーの登場は、やはり社会に与える影響が大きい。

AI人材/DX人材の不足が指摘される今の時代感において、社内でそうした人材を育成していく動きにも拍車がかかっているように見受けられる。

これからのビジネスパーソンは、私のような典型的な文系人材も含めて、大枠でも構わないので、今後どのようなテクノロジーが進化していくのかをつかんでおく必要がある。

未来に必要となるビジネススキルや人材像を把握するという意味では、企業や団体の人事担当者の方々も同様だと考える。

そこで今回は、今後期待されている様々なテクノロジーを学べるバリューの高い1冊をご紹介したい。

「日経テクノロジー展望2025 世界を変える100の技術」。
その名の通り、ビジネスパーソンがぜひ知っておきたい、これから注目しておきたい100の技術について、日経の専門誌編集長、ラボ所長がわかりやすく解説している。

一例だが、最新テクノロジー例として、以下が取り上げられている。

AIエージェント、完全自動運転、介護ロボット、産業メタバース、核融合、ペロブスカイト太陽電池、海洋デジタルツイン、宇宙太陽光発電、鉄鋼脱炭素、EV優先プラットフォーム、自己増殖型mRNAワクチン、光衛星通信、培養肉、グリーンコンクリート、ギガキャスト、ダイヤモンド半導体、PDCE避雷針、スマートタイヤ、代理親魚技法、ドローン医薬品配送などなど。

耳馴染みのある技術が多いとお感じだろうか。それとも、聞いたことのない技術もあっただろうか。
日本が先行している技術もあれば、米中をはじめとした海外諸国に先行を許している技術もある。

詳しいことは専門家の方の教えを乞うとして、「テクノロジーの潮流を知る」「自分の横軸の知識を増やしていく」といった活動の一環としてぜひ、お読みいただきたい1冊である。

本書の構成

本書は、全8章で構成されている。
今回の2025年版は以下のようなラインナップである。

第1章:2030年のテクノロジー期待度ランキング 1位は「完全自動運転」

第2章:AI(人工知能) 様々な分野に進出し、複雑な作業を単純化・自動化

第3章:IT・通信 広域・高速度の通信とデータ連携の技術が進化

第4章:医療・健康・食農 医師、患者の負担を減らす技術が発展

第5章:エネルギー 核融合の実現、クリーンエネルギーに期待

第6章:エレクトロニクス・機械・素材 高効率化につながる半導体技術や素材が登場

第7章:モビリティー 完全自動運転、環境負荷低減が技術の核に

第8章:ライフスタイル・ワークスタイル 身近なところで新技術が登場、生活環境を一新



第1章では、「ビジネスパーソン600人が選ぶ2030年のテクノロジー期待度ランキング」が掲載されている。
ちなみに、ベスト3は以下となっている。

第1位:完全自動運転、第2位:介護ロボット、第3位:産業メタバース
事故リスクを極限まで減らした「完全自動運転」、世界最速高齢化国家の課題解決手段としての「介護ロボット」、工場の生産性向上や技術伝承で期待される「産業メタバース」
この3つが、2030年に向けて、期待されている「三強」ということになる。

人材部門の観点で見ると、第8位に「ピープルアナリティクス(人材の採用や配置にAIを利用)」がランクインしていることも興味深い。
第2章から第8章までは、各章のタイトル通り、分野別の注目技術の紹介のみならず、「技術成熟度(高中低の3段階評価)」「2030期待度(点数表示)」による評価もされている。

それぞれの技術について、数ページでわかりやすく解説されている。

まずは本書の目次をご覧いただき、100の技術のラインアップにお目通しいただきたい。
おそらく100者100様の注目ポイントがあると思うが、全くイメージできないテクノロジーが登場していたら、本書を通じて、学ぶ価値があると思う。

ワクワクするテクノロジーも登場してきており、2030年以降の未来を想像する力も併せて身につく。
期待されているテクノロジーは、裏を返せば、社会課題を浮き彫りにしてくれるのだ。

ちなみに私がもっとも期待している技術を2つ紹介させていただくと、2章:AIで登場する「海洋デジタルツイン」、そして5章:エネルギーの章の最後に登場する「宇宙太陽光発電」だったりする(目標実現時期は2050年頃?)。
※もちろん、100の技術全部に関心があるという前提ではあるが。

皆さまは何に注目しただろうか。

テクノロジーに関心を持つこと、それは未来に思いを馳せること

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 全100の技術にサッと目を通し、聞き馴染みの薄いテクノロジーをピックアップする
  2. 比較的、近い将来実現しておかしくない技術、少し遠い未来の技術という具合に実現時期の可能性を探る
  3. 未来の社会像を意識しながら、技術の実現可能性を冷静に探る(テクノロジーが素晴らしくても、需要がどの程度あるかの見極めは大きなポイント)
  4. 注目した技術における第一人者(研究者、教授等)を調べる

手元で確認した限り、本書は2016年以降、毎年刊行されている。
例年9月に本書が発刊されるということをまずは押さえておきたい。

よくこの連載でお伝えしている内容ではあるが、やはり毎年同時期に刊行される定番書籍は、前年版と比較して見ておくと、学びが大きい。

「昨年、出ていたテクノロジーが今回は出ていない(ベスト100に入っていない)」
「あっ、新しいテーマが出てきた」「これって何だろう?」
テクノロジーを軸として、専門誌記者による最新の注目ポイントを「横串し」で学べることがありがたい。

これから何が起こるかわからない…という時代感ではあるが、それでもテクノロジーは確実に進化していく。

本連載読者の皆様には、前号でご紹介している「会社四季報業界地図」(東洋経済新報社)と併せてお読みいただきたい。

この記事は全文公開しています。
無料会員登録すると、
全ての記事をお読みいただけます。
2,500本以上の人事・人材開発専門記事が読める!
無料で読み放題 会員登録する
会員の方 ログイン