今週の“読まぬは損”

第188回『会社四季報 業界地図2025年版』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

今年も出ました。大定番の1冊!

2024年上半期(1~6月)の日本におけるM&A件数は過去最高を記録した。
参考記事

国内企業同士のM&Aも活発化しており、いよいよ業界間の垣根を超えた大業界再編時代がやってくる予感がしている。

顧客ターゲットが近い業界同士が手を組んで、新たな産業構造の世界観を創り出す。
私たちはそのような時代にこれから対峙しようとしている。

これからのビジネスパーソンはやはり、見るべき世界の「レンジ(幅)」を拡げていく必要がある。
特にビジネスリーダーの皆様は、横軸の知識の重要性を問われる時代になる。

・様々な業界の変化を知る
・急接近している業界がどこかを知る
・誰と誰が手を組み、そこから何をしようとしているかを推察する
・自分の業界への影響を推察する

長年に渡り、企業研修の講師を担当しているのだが、今回ご紹介する1冊は本連載においてもそうなのだが、常に推奨している。

その名も「会社四季報業界地図」。
本連載でも毎年ご紹介しているが、各業界、そして企業を熟知している会社四季報の記者による定番そして渾身の1冊。

毎年8月下旬に発刊される累計250万部突破のベストセラー本である。

この1冊で200近い業界の読み解くべきポイントや企業相関図・勢力図が読めるのはありがたい限りである。

本書の構成

今回の巻頭の特集は、「ニッポンの縮図」。

特に見ておきたいのが「10年分の天気予想から読み解く業界の栄枯盛衰」である。
見開き2ページで、注目業界の10年の栄枯盛衰の様子をビジュアルで理解できる。
さて、皆様は何に注目されるだろうか。

業界地図本編は、「注目の業界」「注目の地域」に関する記載から始まる。

今回、「注目の業界」に選ばれたのは、「AI」「MaaS・ライドシェア」「リニア新幹線」「投資」「万博・統合型リゾート」「スポットワーク」「リスキリング」「脱炭素」「DX」の9業界。
時代感を感じさせてくれる顔触れである。
「スポットワーク」「リスキリング」に注目される方は多いだろう。

また今年から、「注目の地域」が仲間入りした。
もともと読者の要望が多かったということで、米国(3分野)、中国、グローバルメディア、日本の地域ブロック別の計11の分類ごとの未来を想起するための「地域」の今を理解することができる。

恒例の業界地図コーナーでは、1~2ページで各業界のポイントが解説されている。

「情報通信・インターネット」「自動車・機械」「エレクトロニクス機器」「資源・エネルギー・素材」「金融・法人サービス」「食品・農業」「生活用品・嗜好品・薬」「娯楽・エンタメ・メディア」「建設・不動産」「運輸・物流」「流通・外食」「生活・公共サービス」の12分野の193業界、登場企業数は実に4231社となっている。

また、あえて「深読み」されている業界が11ある。
成長を期待されている業界もあれば、現状、苦戦気味の業界もある。
なぜ、この業界が「深読み」対象になっているのか…深読みしながら読んでおくことをお勧めする。

関心が薄い業界についても、年に1回の業界知識アップデートの一環として、読んでみてはいかがだろうか。
きっと、意外な場所からビジネスヒントを得られると思う。

これから何が起こるのか…未来を読み解くためにも読んでおきたい必読本

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. まずは193業界全てに一通り目を通し、自分のイメージと異なる業界をピックアップする
  2. 知らなかった企業名をピックアップして、特にユニークだと直感的に感じた企業について追加の情報収集を行う
  3. 異業種参入の予兆を感じる業界を予想する
  4. 各業界における注目キーワードを知る

2025年版も読み応え満載の熱い1冊であった。

ちなみに私は最新版が出ると、前年版との変化を比較するのだが、今回もいくつかの発見があった。
注目業界の変化、深読み業界の変化、未来への兆し……。
やはり比較は重要である。

こうして読み終えてみて、やはり、「業界大再編時代」というキーワードが頭から離れない。

ぜひ、読者の皆様には、「顧客の業界の変化」を予見するために本書を活用いただければと思う。
「顧客の未来」を考えるということは、自社の未来を考えることにそのままつながるのだ。

もちろん、目次を眺めながら、興味のある業界を皮切りに読み始めるのもよいと思う。
各業界ごとに、タイトルの横に1行で当該業界を見るべき視点(ex. ○○が続く。○○が高水準)も記されており、業界理解を助けてくれる。

毎年、同時期に発売されている『日経業界地図2025年版』(日本経済新聞出版)も併せて、比較しながらお読みいただくことを今年もお薦めしておく。
「日経業界地図2025年版」日本経済新聞出版

本書を読んで、注目業界をピックアップして議論するという社内研修もお勧めである。
ぜひ試してみていただきたい。

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