今週の“読まぬは損”

第164回『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

新たな年を迎えるにあたって考えておきたいこと

早いもので、もう2023年である。時間が経つのが本当に早い。

Withコロナの世界感においては、働き方においても大きな変化が生じた。最近の電車の混雑度合いなどを見ていると、思いのほか出社する方が増えた印象があるものの、それでも「出社+リモート勤務」併用で活躍されている方が増えたことが1つの大きなポイントだと思う。読者の皆様の勤務先ではいかがであろうか。

「出社+リモート」型、あるいは「リモート主体」の働き方においては、働く側の力量が大きく問われる。いかに自分をコントロールできるか……、いかにスピーディに仕事ができるか、いかに仕事の質を上げていけるか……。

いずれも大切な要素なのだが、おそらくこれからの時代においては、「時間」の重要性がさらに問われていく。

自分の時間を有意義に使うために重要なことは、やはり、仕事のスピードアップであろう。スピードを上げることができれば、時間を創ることができる。人生を楽しむためには、仕事と仕事以外の時間のメリハリが大切である。もはや一時もムダにはできないと、心に焦燥感が押し寄せてくる。

正直に告白すると、私自身は仕事のスピード感に対して、一定の課題感を感じている。ありがたいことに近年、研修や講演等の業務で多くのオフォーを頂けるようになっているのだが、時間との兼ね合いの中で、少しスピードを上げていかないとこれはマズイなあ、と感じることもままある。

もちろん、仕事のスピードアップにつながる有益な書籍は読み続けている。

こうした課題感を感じている中で、私自身、この方が本を出したら必ず買う「マイ著者」のお一人である越川慎司氏による注目の新刊が今回のテーマにピッタリなので是非紹介したいと思う。

注目のタイトルは『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』。皆様、果たしてどのような内容を想起されたであろうか……。

AIで800社以上、約31,000人ものビジネスパーソンの行動を分析した膨大なデータに基づく示唆、そして、プロの業務改善コンサルタントによる学びが存分に得られる本書はやはり必読の1冊であった。

本書の構成

本書は全6章で構成されている。仕事の種類を大きく3つに分類し(1.必要な仕事、2.ムダな仕事、3.自分では気づいていない名もなきムダ仕事)、ムダな仕事はもちろん、名もなきムダ仕事の見える化に切り込んでいる点がありがたい。

「あっ、確かにそれある!」と読者の皆様が思わず膝を打つ光景が目に浮かぶ……。随所で登場する「でぶどり君(橋本ナオキ氏作)」の4コママンガもユニークである。

各章のポイントフレーズを記載しておきたい。

第1章:「忖度資料」ほどムダなものはない

働く時間のうち2割近くを占めるのが「資料づくり」であり、資料作成への「過剰な気づかい」が仕事を増やしている。

そして気づかいで増えてしまうページを「忖度ページ」と名付け、パワポ資料の作成ルールや上司対策等々の解決策が書かれている。「ツァイガルニク効果」はうまく使っていきたい。
※著者監修の「パワポの企画書テンプレート無料配布」の案内も紹介されている。

第2章:読まれないメールは書いていないのと同じ

メールやチャットにまつわる作業は、仕事全体の9%を占めている。周りの方の時間泥棒にならないようにするためのメールルールが紹介されており、本ルールを会社全体で適用することで膨大な時間を別の業務に移せるに違いない。

第3章:会議、打ち合わせはムダな時間の宝庫!

仕事時間の半数に迫る45%が何と会議時間という調査結果を見て、唖然とさせられる。

上司が自己満足に浸るための「マウンティング会議」や「忖度ミルフィーユ(会議のための会議のための会議)」といった会議のムダに対して多くの企業がそのまま使えるノウハウが紹介されている

何といっても、仕事時間の半分を占める時間への対策であり、参考にしない手はないだろう。

第4章:ITが苦手なベテラン社員への対処法

仕事でITツールを使いこなしている人は、全体の24%強に過ぎないという調査結果に頷きながらも、この章は人材部門の方には是非、熟読していただきたい。

DX化が進み、いずれ仕事にメタバースも入り込んでくるというこれからの時代において、ITツールを使わないという選択肢はあり得ないだろう。時代が戻ることはないのだ。ある意味、本書のハイライトだと私自身感じたのは実はこの章である。

第5章:社内コミュニケーションはもう1つのお仕事

この章においても、重要なアドバイスが多数得られる。「KYS(空気読みすぎ)」や「1分詐欺」などネーミングがユニークで、思わずクスッとしながら学べる。

第6章:まだまだある! 職場の名もなきムダ仕事

ここでも、タイトル通り、まだまだ登場する名もなきムダ仕事の数々という事例が諸々登場する。この章の最初に登場する事例は、研修を担当している部門の方にとっての「あるある」ではないだろうか。

是非、自分ごととして捉えて、業務改善に存分に活かしたい1冊

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 自分の仕事のスピードをさらに上げていくために何をすべきかのチェックリストとして活用する
  2. 早速、本書のノウハウを即日実行する(既に開始している)
  3. 今まで、目をつむっていた課題にしっかりと目を向ける
  4. 本書で日本企業の「あるある」を学びながら、グローバル事例関連書籍も読み、仕事のスピードアップに務める

39もの「名もなきムダ仕事」の紹介、そして的確な解決策。 繰り返しになってしまうが、ネーミングやイラストもユニークでどんどん頭に入ってくるのがありがたい。

越川氏も書かれている通り、自分にできそうな、1つのことから始めることが重要だと思う。

私自身、越川氏の書籍(ex:「トップ5%社員」シリーズ)を次世代リーダー研修等で参加者にお読みいただき、それぞれの気づきを考えていただくという課題をよく行っているのだが、本書も是非、今後の有力な課題図書として使わせていただければと考えている。

今回もありがたい1冊を届けてくださったことに改めてお礼を申し上げたい。

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