今週の“読まぬは損”

第021回『2020年以降の業界地図 東京五輪後でもぐんぐん伸びるニッポン企業』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

過去の検証の重要性

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年以降の世の中の変化がどうも予見しにくい。いわゆる“ポスト2020”をどう捉えていくのがよいのか?といったご相談を頂戴する機会が随分と増えた。

確かに諸説入り乱れている。楽観ストーリーもあれば、ホラーストーリーもある。書籍の世界では、ホラーストーリーがやや優勢にも思える。不安な時代、先が読みにくい時代には、ホラーストーリーの方がどうしても目立つ傾向がある。

本連載でも度々触れていることだが、AIやIoTに代表されるデジタル技術の進展も相まって、未来を想起することを難しくさせているという印象が強い。こうした時には、歴史や過去に改めて学ぶとよいだろう。例えば、2012年ロンドンオリンピック後のロンドン、英国の状況はどうだったかを確認してみることは有効である。

また、私がお勧めするのは、1996年のインターネット登場の前後でどのような世の中の変化があったのかを見ておくことである。当時のビジネス誌や書籍に書かれていた内容を振り返ってみると、これからを想起する上で参考になる情報が多いことに気づく。

仕事柄、多くのビジネスパーソンと接しているのだが、情報収集・活用に秀でた方々は総じて、「過去の情報からしっかり学ぶ」というメソッドを有している。最新情報はもちろん重要だが、迷いの時代には「過去の情報」「既に起こった未来」にこれからを読み解くうえでの大きなヒントが隠れていることが多いのだ。

目利きに学ぼう!

さて、これからの不透明な時代を読み解くうえでは、もう1つ、「目利きの力」に学ぶという観点も欠かすことができない。そこでご紹介したいのが、今回の書籍である。

著者の田宮氏は、経済記者として30年以上に渡り活躍されており、東洋経済HRオンラインの編集長も務められた「目利き中の目利き」的存在である。私自身も光栄なことに何度か講演等でご一緒したことがあるのだが、東洋経済新報社という日本を代表する企業・経済情報出版社でのご経験とその眼力には随分と学ばせていただいた。

今回の新刊は、『みんなが知らない超優良企業』(2016年)、『無名でもすごい超優良企業』(2017年/共に講談社)に次ぐ、優良企業シリーズである。

まさに今、読者が知りたいポイントが詰まっている1冊だといえよう。今後、どの業界のどの企業が有望なのか、当然成長産業が主体となるが、実に217社もの個別企業名が紹介されており、少々意外な企業も含めて、目利きの視点を学ぶことができる。

ビジネスパーソンの未来探索はもちろん、人事担当者にとっては、これから注目される企業について一気に学び、広く俯瞰できる点が魅力である。

本書の構成

全6章で構成されている本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 著者が有望視している業界とその理由を学ぶ
  2. 産業と企業のつながり、産業の中の有望なビジネス、その相関性を学ぶ
  3. なぜこの企業が伸びるのか、自分の認識と比べながら考える
  4. 東京オリンピック以降のビジネストレンドのヒントを会得する

業界(ビジネス)としては大きくは「電気自動車(EV)」「外国人相手」「イスラム関連」「国内少子高齢化」「社会貢献企業」にフォーカスして書かれている。特に社会の流れを大きく変えるであろう「電気自動車」は2章に分けての掲載となっており、優良企業の宝庫と化している。

いずれも興味深い内容で、じっくりと読んでいただきたいのだが、とかく縮小トレンドで語られがちな「国内少子高齢化」で勝つ企業に関する記述は何度も読み返した。注目業界の上位企業や、目立たないが注視しておきたい中堅企業がわかる。

繰り返しになるが、時代の流れを読むためには、目利きの力は欠かせない。「なるほどそうなんだ」と感じていただけるポイント満載の1冊である。もちろん、著者の新刊には今後も注目していきたいと考えている。

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