後編 「使える」だけでは根づかない生成AIの浸透は、人事の腕にかかっている 萩谷俊之 日本能率協会マネジメントセンター ラーニングイノベーション本部 事業開発部 部長
萩谷俊之
「デジタル人材育成の研修は実施しているが、現場での活用が広がらない」と悩む企業は少なくない。本連載の前編では、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)の萩谷俊之らに、デジタルスキルを全社員の「ビジネスマナー」として定着させるための人事の役割を聞いた。
後編のテーマは「生成AI」だ。技術が猛スピードで進化する今、ツールの使い方を教えるだけの研修は意味をなさない。生成AI 活用を組織風土として「根づかせる」には何が必要か。
JMAMが実践した新入社員研修のルポを交え、生成AI 時代における人事の新たな使命に迫る。
[取材・文・写真]=編集部

「スキル」と「マインド」の2軸の設計へ
生成AIのビジネス活用が急速に進むなか、人事担当者からは「プロンプトの書き方を教える研修を実施したが、現場で定着しない」「一部の社員しか使っていない」といった悩みが聞こえてくる。現在の生成AI研修の在り方について、萩谷は「単なるスキル研修の意味は急速に薄れている」と指摘する。
「少し前まで、生成AI研修といえばプロンプトの書き方や便利な使い方を教えるスキル研修が中心でした。しかし、ツールもモデルも数カ月単位で進化し、昨日まで最適だったプロンプトが今日にはもう古くなります。操作の巧拙だけを教えても、その知識はあっという間に陳腐化してしまうのです」(萩谷)
では、これからのAI研修には何が求められるのか。萩谷は、育成を「スキル」と「マインド」の二軸で設計することの重要性を強調する(図1)。

「スキルとは、自社のツールに合わせて実業務でのユースケースを見つけ、企画に落とし込む力です。一方のマインドとは、AIに任せる領域と人間が担うべき役割を問い直す姿勢を指します。陳腐化しやすいのはスキルであり、長く役立つのはマインドなのです」
「マインド」の育成こそが重要であるとはいえ、人事担当者のなかには「自分たちは技術がわからないから、AI研修を主導するのは難しい」と感じる人もいるだろう。しかし、萩谷は「決して気後れする必要はない」と背中を押す。
「技術のすべてを人事が抱え込む必要はありません。専門的な部分は、ITに詳しい部門と組んで補えばよいのです。むしろ、人事だからこそ本領を発揮できるのはその先にある『問い』です。どうすればこの取り組みを、現場にとって前向きな動きとして広げていけるのか。ここは、組織と人を見つめてきた人事がもっとも得意とする領域に他なりません」

