CASE2 サイボウズ マネジャー同士のチームワークを醸成する取り組みも マネジャー不在の3年間で見えた求められる真の役割 中根弓佳氏 サイボウズ 執行役員 人事本部長 兼 チームワークあふれるまちづくり室長|水戸将弥氏 サイボウズ 開発本部 副本部長
マネジャーは、本当に必要なのか――。この問いに真正面から向き合ったのが、サイボウズだ。同社は2019年、開発本部において部長職を廃止。権限をチームに委譲し、自律分散型組織への転換を図った。エンジニア約200名を抱える組織での階層撤廃は大きな注目を集めたが、その3年後、同社は再びマネジャー職を復活させる。試行錯誤のなかでたどりついたのは、マネジャーの役割の再定義だった。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=サイボウズ提供
組織変更で部長の役割がなくなった
「kintone」「Garoon」「サイボウズOffice」などを生み出してきたサイボウズの開発本部が、「マネジャー(部長職)を廃止する」と宣言したのは2019年。当時、同社はすでに創業20年を超え、エンジニアだけでも約200名を擁する大所帯だっただけに、大胆な階層撤廃は業界内で驚きをもって受け止められた。
ところが、さらに意外な展開が。議論の末に廃止したマネジャー職を、3年後にまた復活させたのだ。
“マネジャーなしの3年間”は結果だけを見ると回り道にも思えるが、同社執行役員で人事本部長を務める中根弓佳氏は、一連の経緯を「決してムダでも遠回りでもなかった」と明言する。
「なくしてみて初めて、マネジャーという役割の本当に大切な部分も、実はそれほど大切ではない部分も見極めることができましたから」
では、そもそもなぜ「なくす」を選んだのか。現場で組織変更に携わった開発本部副本部長の水戸将弥氏によると、「同本部は最初からマネジャー職を廃止するつもりではなかった」という。
「2018年までの開発本部の体制は、『東京開発部』『松山品質保証部』など職能・地域ごとに部署を設けて部長を置き、各部署から各プロダクトチームにメンバーをアサインするマトリクス組織でした。かつてオンプレミスのパッケージが事業の中心だったころは、開発サイクルが比較的長く、企画部門で企画を固めてから開発部が製品をつくり、最後に品質保証部がテストを行うというウォーターフォール型の分業方式で製品を仕上げていたため、先のマトリクス組織が機能していたんです。しかし、2012年ごろからサイクルの短いクラウド事業が本格化し、アジャイルな開発の進め方が取り入れられると、組織構造に弊害が目立ってきました。職能や拠点ごとの縦割りの壁を取り払い、プロダクト別のチームでより主体的に動ける開発体制にしなければやりにくく、間に合わない。そこで従来の各部署を解体し、マトリクス組織からチームごとの組織へと変更したのです」
チーム主体で意思決定できるように、予算・勤怠管理など旧部署のマネジャーたちが担っていた権限や役割は切り出し、チームへ委譲した。
「チームでは扱いにくい人事評価や労務管理といった役割については、もともとマネジャーだった人たちを集めた『組織運営チーム』が一括で担うことになりました。その結果、マネジャーに残る役割がなくなり、じゃあいったん廃止しようかと」(水戸氏)
つまらない大企業になりたくない
マネジャーの廃止はあくまで開発本部内に限った変更だが、背景にはサイボウズという企業全体の思想やストーリーが大きく影響している。同社には「世間で働き方改革が叫ばれるずっと前から、働き方改革に挑んできた」(中根氏)という先進企業としての自負があるからだ。
「20年ほど前、私たちはM&Aに失敗し、離職率が3割に迫るという暗黒時代を経験しました。そこから方針を転換。より多くの人が、より長く、より成長して働けるように、最長6年間の育休・介護休暇制度や在宅勤務制度、子連れ出勤、複業の奨励など、必要と思われる諸施策にスピード感をもって取り組みつつ、メンバーの声を聞きながら個別対応にも努めてきました」
目指したのは、“100人100通りの働き方”の実現。そうすることで組織も事業規模も拡大し、先の開発本部の組織変更が俎上に載るころには、社員総数1,000人の大台を見据えるまでになっていた。

