OPINION 1 部長をイノベーションの主人公に 元気な部長が経営をワンランクUPさせる
昨今の部長職は、職位が狭められ、本来の力を発揮しにくいと言われる。だが、部長こそイノベーションの芽を見出し、次世代の柱へと大きく育てることができる役職だ。近著『みんなの経営学』で、全ての人が教養として経営学を学ぶことの有用性を説く話題の経営学者が、日本企業の再浮上は“部長の活躍”にかかっていると語る。
──部長の活躍が企業成長のカギを握っているとお考えですか。
佐々木
はい。部長とは本来、イノベーションの主人公になるべき存在です。部門を統括する一方で、全社的な視点でマネジメントし、さらには業界にも目配りができる重要なポジションだからです。課長を現場の長とするなら、部長は部門の社長と言えます。目の前の業務だけではなく、中長期的な視点から戦略を考え、新たな仕事の枠組みをつくるのが部長の仕事です。部長が力を発揮することは、間違いなく企業に活力をもたらすでしょう。
──一方で部長が課長化しているという嘆きも耳にします。部長職に今、何が起きているのでしょうか。
佐々木
確かにこの20年ほど、部長の位置づけが危うくなってきています。部長が力を発揮できない理由は、3つの阻害要因によるものです。まず1つは、ITの浸透などにより「情報の民主化」が進んだことです。かつては組織の上層部ほど情報を握っており、それをパワーの源泉にすることで管理を行ってきました。しかし情報のフラット化によって、この手は通じなくなりました。次に外部取締役の導入などのガバナンス変革の流れに伴う執行役員制度の導入によって、部長が持っていた職分が実質的に薄くなってしまったことが挙げられます。