全国の従業員が有明に集結! 自律と共創につながる 2日間の「ラーニングフェス」 今井のり氏 レゾナック・ホールディングス 取締役 常務執行役員 最高人事責任者(CHRO)等
今井のり氏
化学素材メーカーのレゾナックは2025年11月、従業員向けの学びの祭典「ラーニングフェス」を東京・有明で開催。2日間で60の学習プログラムを提供し、1,500人もの従業員が参加する盛況ぶりだった。
学びのイベントを“フェス”の形式にした意図とは。また、企画の肝である「自律」と「共創」につながる仕掛けや、フェスでの学びを最大限生かすための工夫について、話を聞いた。
[取材・文]=たなべ やすこ [写真]=レゾナック・ホールディングス提供
共創型化学会社にふさわしい学びの機会の提供を
大手化学メーカーのレゾナックは、2025年11月に従業員向けの学習イベント「ラーニングフェス」を開催した。特筆すべきはその規模だ。東京2020オリンピック・パラリンピックで体操の会場として使用された有明GYM-EXに11のセミナールームを特設し、60種の学習プログラムと18種の交流のための企画を提供。参加者は自身の課題や関心とタイムテーブルを照らし合わせ、自分に合ったものを受講できる。まさに音楽フェスさながら、とことん学び倒せる2日間だ。
このイベントは、従来行われていた階層別研修のリニューアルとして企画された。その背景には、同社が掲げる「共創型化学会社」があった。
「私たちが扱う機能性素材は、お客様の個別のニーズにカスタマイズすることで価値が生まれます。すなわち従業員には、自社のリソースをどう生かせるかを自身で考え、周りと協力しながら動く姿勢が求められるわけです。それには自分ができることを知ると同時に、周りにどんな仲間がいるのかを知り、巻き込んでいく必要がある。仕事での実践はもちろんですが、学びの場でも自律と交流を促していくことが大事だと考えています」(取締役CHRO 今井のり氏)
そこで行き着いたのが、「自分に必要な学びを自分で選びとる」体験の提供だった。ラーニングフェスの企画・統括にあたったカルチャー・人事政策企画部組織人材開発グループの新山覚士氏は、フェスという形式にした理由を次のように説明する。
「ポジションに応じた学びとして、階層別研修は当社にとっても重要な位置づけにあります。けれども、対象者に同じものを一律に提供するやり方で、自律といえるのか。学習者のスキルアップやキャリア形成に役立ち、かつ共創型化学会社にふさわしい学びの仕掛けをつくれないか。そう考え抜いてたどりついたのが“フェス”というやり方でした」(新山氏)
「CEOやCHROは“人の育成に力を入れます”と言っている割に、研修はあまり代わり映えしないですよね」―― 。ある若手社員に言われたひと言も新山氏を奮い立たせた。
レゾナックは昭和電工と日立化成の統合を経て、2023年に設立した経緯を持つ。「化学の力で社会を変える」というパーパスを掲げバリュードリブンを図るべく、今井氏とCEOである髙橋秀仁氏を中心に、これまでとは違った企業文化の醸成に向け様々なアクションを繰り出してきた。メッセージの発信に加え、タウンホールミーティングで事業所を駆け巡り、現場の本音に耳を傾ける両者の姿は、「これからの時代にふさわしい会社へと、生まれ変わるんだ」という気概を感じさせる。
研修や教育も、これからの時代にふさわしいものにしなければ―― 。そうして出てきたのが、フェスというアイデアだったのだ。
新山氏からアイデアを聞いた今井氏は、「それは面白い!ぜひやろう!」と全面的に支持する姿勢を見せたという。しかし、新しいことに取り組むからには中途半端ではない、覚悟も必要だ。
「なにせ国内の全事業所を巻き込む大プロジェクトです。事業所長にラインマネジャー、現場の従業員にまで目的とメッセージをしっかりと伝える必要があります。行ってみたい、参加してよかったと思ってもらえるものにしなければ、2回目はないよということは人事のメンバーにしっかり伝えましたね。役員陣に話を通す前に有明の会場を押さえたと聞いたときは、前のめりがすぎると思いましたが(笑)」(今井氏)
丁寧な説明を繰り返し事業所や従業員を巻き込む
2025年が明けると、11月に向け本格的な準備がスタートした。全体コンセプトは「ここにしかない学びと気づき」とし、有明に足を運ぶことで出会える知見や気づき、参加者同士の交わりを重視した。対象は国内拠点の従業員で、2日間で1,000人以上の参加を目指し、かつての階層別研修の受講対象にあたる主任層やリーダー層への昇格者は、原則参加を必須とし、その他広く手挙げ制での参加を募った。
難しいのは、前例のない試みにどう社内の賛同を得て自主的に参加する機運を高めていくか、という点だ。いくら大がかりなイベントを打ち上げても、各拠点から従業員が集まらなければ意味がない。また、本社と現場で温度差が生まれては、組織全体の士気や個人のエンゲージメントにも悪い影響を与えてしまう。
そこで最初に、役員陣の協力を取り付けた。特にCEOの髙橋氏には、年頭挨拶でラーニングフェスの開催を発表してもらうことで、重要な全社行事であることを伝えた。またタウンホールミーティングでは今井氏と共に行く先々でフェスの話題に触れてもらい、事業所へ本気度を示した。
「トップのコミットは、事業所長や部長たちに大きな影響を与えます。マネジメント層の理解を得られれば、フェスに興味のある現場の社員も参加しやすくなるでしょう。そのため、意識的にフェスへの期待を言葉にしました」(今井氏)
フェスをつくり上げる過程でも、意図的に従業員を巻き込んだ。具体的にはプロジェクトチャレンジ制度(社内副業制度)を使い、人事の担当者以外に5名の従業員を企画・検討メンバーとして迎え入れた。

