三井不動産ビルマネジメントの事例 昇格マネージャーの意識変革プロジェクト 松尾 睦氏 青山学院大学 経営学部 経営学科 教授
松尾 睦氏
三井不動産ビルマネジメントは、昇格した管理職を対象に2022年よりマネージャー育成を目的としたプロジェクトを実施している。取り組みの背景や内容、その効果について、経験学習の第一人者であり、青山学院大学経営学部教授の松尾睦氏が、同社の人事部長・青沼真吾氏にインタビューを実施。外部有識者としてプログラムに参加した所感も交えて、同施策について寄稿いただいた。
プロジェクトのきっかけ

「日本の人事部」が主要各社(553社)に対して実施した調査※によれば、「管理職は成長している」と回答した企業は全体の43.6%、つまり、管理職の半分以上は「成長していない」のが現状である。そのような中、三井不動産ビルマネジメントは、昇格した管理職を対象に2022年度より「マネージャー育成」を目的として、管理職自らが「会社全体の視野を持つ魅力的なマネージャーを創出する施策」を提案する社内プロジェクトを実施してきた。
そのきっかけは、2021年に退職者が一時的に増えたことにある。離職の理由を調査したところ、いくつかの要因のうちの1つとして、マネージャーに対する期待感の低下という問題が浮かび上がってきた。そこで、マネージャーが経営者視点を持ち「自分たちが変えていく」というマインドになるための意識変革プロジェクトを実施することになった。
※株式会社HRビジョン(2025)『日本の人事部人事白書2025』
プロジェクトの概要

本プロジェクトの2025年度における進め方は図に示したとおりである。まず、企業としての経営課題を参加者に伝えた後(1回目)、近い課題感を持つ参加者が4~5名のチームとなり(2回目)、魅力的なマネージャーを創出するためのアイデアを発案し(3回目)、アクションプランを考えるとともに(4回目)、プラン検証のためのインタビュー調査を設計する(5回目)。ここまでが7~8月に実施される。
その後9~11月にかけて、各チームは、「スタッフレベル社員へのインタビュー」「役員との対話」「外部の有識者との対話」を通してアクションプランを練り直す。そのうえで、2022~2024年度のプロジェクト参加者から選ばれた審査員に対して、アクションプランをプレゼンし、投票をもとに、もっとも優れた案が採択されるという流れである。なお、本プロジェクトには、株式会社CENTERが運営面で参加しており、プロジェクト全体のファシリテーション、本テーマに関する社会動向・他社事例のインプット、2回目セッションにおけるトレーニングやチーム分け、ならびに外部有識者のセッティングを受け持っている。
プロジェクトのアップデート
本プロジェクトは、過去3年間の運営を通して、いくつかの変更が加えられてきた。第1に、1年目のプロジェクトでは、マネジメント自身の意識を従業員サイドから経営サイドに変えてほしいという意図を持って、研修として実施していた。しかし、参加者にその意図が伝わりにくかったため、2年目からは、研修ではなく、「魅力的なマネージャーになるための施策を考えるプロジェクト」として参加者への自分事化を図った。
第2に、2年目からは「役員との対話」を通して、役員の意見がプランに強く反映されてしまったため、3年目以降は役員の意見を押し付けないよう事前にインストラクションし、参加者の考えを尊重する形をとった。

