No.09 大ヒット漫画編集者が語る作家の能力を引き出す編集者の仕事 佐渡島 庸平氏 コルク 代表取締役社長 CEO/編集者|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
佐渡島 庸平氏
人は誰しも指導者になる。これは講師やマネジャーに限った話ではない。組織で働く人であれば、一度は人を育て、チームを育む指導的役割を担う機会が訪れる。本連載では、人の成長に寄与し豊かな成長環境を築くプロ指導者たちに、中原淳教授がインタビュー。第9回はコルク代表取締役社長 CEOで、編集者の佐渡島庸平さんにお話を伺った。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=山下裕之
編集者と漫画家は夫婦のようなもの
中原
初めに編集者と漫画家の関係性や作品の制作プロセスを教えてください。
佐渡島
編集者と漫画家との関係は、夫婦関係に近いものがあります。モノづくりをしているといっても、基本的に編集者と漫画家は1対1の関係。「夫婦で外食のレストランを決める」という場合も、夫婦の年齢や力関係、好みなどによって決め方はそれぞれ異なるように、漫画づくりも、夫婦の形と同じくらい多様で、作家の個性と編集者の個性の組み合わせによって相当違うのです。
また、編集の仕事も様々で、講談社には原作をつくることを専門にしている編集者もいました。僕自身は原作をつくるというより、作家の能力をうまく引き出すことが好きでしたし、編集者の仕事だと思ってやってきました。
中原
仕事内容も、作家と編集者の組み合わせによって変わるのでしょうか?
佐渡島
変わりますね。僕の場合、講談社に入社し、最初に配属されたのが週刊モーニング編集部で、初めて担当したのが、井上雄彦さんの『バガボンド』でした。大学を卒業したばかりの新人が井上雄彦さんのようなベテラン作家に対して言えることは何もありません。当時の僕は、連載の参考になりそうな情報を仕入れたり、本を読んでまとめたりする仕事をしていました。
中原
もしも新人作家の担当になったとしたら、どんな仕事をしますか?
佐渡島
新人作家の場合は漫画の型を教えたり、一緒にプロットをつくったりするところから始めます。作品を書き終えたフェーズにいる作家には脚本を提案するし、書きたいものがたくさんあるという作家には、それを売れる作品にするためのアイデアを提案するという具合で、編集者の仕事は一様ではありません。
中原
編集者というのは「作品をつくらせる」イメージなのですか?それとも、「作家を育てる」イメージ?
佐渡島
これも人によります。なかには、他社のエース漫画家を「次はうちでやりましょう!」と「口説いてつくらせる」タイプの編集者もいます。一方僕は、「育てる系」で、誰も注目していなかった人が気づいたらすごい作家になっている―― というのが好みですね。

