第44回 ビジネスリーダーの成長が国の成長のためには不可欠 菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー
経営や人事を担う人にとって、ビジネストレンドの把握は欠かせない。
1日1冊の読書を20年以上続ける読書のプロが、ビジネスを読み解く書籍を紹介する。
マネジメント人材の育成が課題
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が1989年から公表する「世界競争力ランキング」に毎年注目している。本調査は、世界69の国と地域を対象に、当該国の競争力について、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」という4カテゴリーと341もの指標をベースにスコア付けされている。
2025年版の結果を見ると、スイスが4年ぶりに首位に返り咲き、前年1位だったシンガポールは2位となり、香港が3位に浮上するという結果となった。シンガポールは近年、本ランキングの上位常連であり、国民全員リスキリング政策の成功もあり、短期間で国力を高めている印象がある。香港は、もともと国際金融都市として高い地位を確立しているが、貿易や海運の中心地としても自国を強化している。ベスト3の国々から、日本のビジネスパーソンが学ぶべき点は多いと思う(ちなみに日本は35位)。報告書には、各国の主要指標のランクが紹介されており、人材関連の日本のデータを見ると、従業員(Employment)は4位と世界でも高評価なのだが、経営管理/マネジメント(Management Practices)については、65位と非常に厳しいスコアとなっている。
あくまで参考指標ではあるが、国の様々なレポートにおいても、本データが引用され、日本の課題の1つとして「マネジメント人材の育成」がしばしば取り上げられている。
AI時代の「人徳のある」リーダー
本誌でも、管理職になりたくない人が増えているという話題を見かける。事実、そういうトレンドになっていることは研修講師の立場でも実感しているのだが、それでも、優秀なマネジメントリーダーが組織の舵取りをしていくことが重要なことに変わりはない。むしろAI時代だからこそ「人徳のある」リーダーが望まれるのではないか。日本ならではのリーダー育成の観点から、今回は以下のポイントで選書してみた。
①世界の最先端の組織論、リーダー論が学べる骨太の書籍
②会社や組織の未来について学べる書籍
③「壁」を突破したリーダーの思考が学べる書籍
④日本の良い部分を前提にリーダー像を描くための書籍
前述のManagement Practicesにおいて、今後は日本の順位が上がっていくことを心から願っている。


