連載 調査データファイル 第91回 外国人高度人材の活用② 個を尊重する企業の姿勢が 外国人高度人材登用のカギ
前号に続き、外国人高度人材の活用について考えていく。
ひと言で外国人の雇用と言っても、高度人材とワーカー層、新卒と中途採用では、労働者が企業に求めるものは異なる。
実際、現場のワーカー層には日本型の職場慣行が好評で日系工場の人気は高い。
しかし、高度人材には日本型マネジメントは不人気だ。
経営手法と人事管理が密接な関係にある日本企業において人事マネジメント手法だけを改革することは難しい。
外国人高度人材と日本企業の間にあるギャップをデータから浮き彫りにし、日本企業が改善すべき点を探る。
1. 日本企業における外国人高度人材の現状
前号で明らかにしたように、外国人高度人材(高度な知識や専門技術を有する外国人人材)の卵といった留学生は近年急増しているが、その主な原動力は中国人留学生である。中国の若者が日本に憧れて留学するといった背景もあるが、最も大きな理由は中国国内での就職難である。中国の雇用情勢は短期間での改善は見込めないため、この傾向は今後も続くものと思われる。
新卒者ではなく、現在日本で働いている外国人高度人材全体に関しても、留学生ほどではないが、中国人の占める割合が最も高くなっている(図表1)。法務省入国管理局の調査によれば、「人文知識・国際業務」または「技術」で在留資格を得ている外国人は近年急増しており、2002年の1 万942 人に対して2007年は2万2792人となっており、5 年間で約2.1 倍に増加している。
急増する外国人高度人材の地域別内訳はアジア(69.3%)、北米(15.9%)、ヨーロッパ(10.6%)となっており、アジアが7 割近くを占めている。国籍(出身地)別では、中国(31.1%)が最も多く、次いで韓国(14.5%)、米国(12.2%)、インド(9.0%)、英国(5.1%)、ベトナム(4.4%)などとなっている。なお、上位6 カ国のうちで前年比増加率が高いのは中国(46.0%)、インド(37.0%)、ベトナム(88.2%)である。
在留資格別に外国人高度人材の推移を見ると、「人文知識・国際業務」はほぼ横ばいで推移しているのに対して、「技術」は大幅な増加傾向を示しており、2006年には「人文知識・国際業務」を追い抜いている。2007年の就労者数は、「人文知識・国際業務」の9395人に対して、「技術」は1 万3397人となっている。
外国人高度人材の就業先の業種を見ると、「人文知識・国際業務」に関しては「教育」(53.1%)が、「技術」に関しては「コンピュータ関連」(77.9%)が、それぞれ大半を占める。また、担当する職務内容を見ると、「人文知識・国際業務」に関しては「教育」(48.4%)と「翻訳・通訳」(16.0%)が、「技術」に関しては「情報処理」(63.4%)、「技術開発」(13.5%)、「設計」(10.8%)が多く、外国人高度人材の業務内容がかなり偏っていることが見てとれる。
国内におけるこうした外国人高度人材の就業形態は、留学生のそれとはかなり異なっている。留学生については、日本人の新卒者と同様に内部育成をして適正配置しようとする企業の採用方針を反映してか、特定の業種、業務に極端な偏りは見られない。これに対して新卒以外の一般的な採用では、企業が即戦力としての人材を求めていることを反映してか、教育やコンピュータ、情報処理といった分野に集中している。