社員や求職者にエーザイの真の魅力を伝えたい 人事の堅苦しいイメージを払拭し「なにか面白そう」な人事へ 三瓶悠希氏 エーザイ ピープル&コミュニケーション戦略部長

大手製薬会社のエーザイは近年、人的資本経営の一環で人事部門と従業員間のコミュニケーションデザインに力を入れる。人事部門の積極的な発信により、守りから攻めの人事へ変革する立役者が、グローバル HR 戦略企画部で戦略グループ長を担った三瓶悠希氏だ。今春からピープル&コミュニケーション戦略部長として、取り組みを加速させる三瓶氏の活躍の源泉に迫った。
[取材・文]=たなべ やすこ [写真]=中山博敬


楽しければその気になれる上司に学んだ仕事の秘訣
経済産業省が人的資本経営の指針を示した「人材版伊藤レポート」を発表しておよそ5年。エーザイは「人的資本リーダーズ」への選出など優良企業として注目を集める。
なかでも2023年より毎年発行する人的資本情報に特化した「Human Capital Report」(HCR)は、大きな話題を呼んでいる。HCRでは本来なら隠したいネガティブな数字も公表する他、50人以上の社員や役員のインタビューを掲載するなど、エーザイのありのままを描く。さらに役員と組織開発についてお酒を片手に語り合う「Project Aka-Chochin」や、メルマガ「2分で学べる人事あれこれ」など、同社では社員が人事を身近に感じられるような企画が次々と生まれている。
これらの旗振りを担ってきたのが、ピープル&コミュニケーション戦略部長の三瓶悠希氏である。同氏が携わる数々の“たくらみ”は、ユーモアに溢れている。昨年社内で開催したDE&Iイベントでは、役員3人に仕事に精を上げすぎた「育児の“しくじり先生”」として登壇してもらい、個人の幸せと生き方、働き方の多様性への従業員の関心を高めた。
「成功体験を並べてきれいにまとめることもできたわけです。でもお行儀のいい話だけでなく、生々しさもあった方が面白いかなと。しくじり先生企画は、事後アンケートでほぼ全員が満足してくれました」
そんな三瓶氏は、会社が営業力の強化を図るべく、例年数十人程度だった新卒MRを約200名採用した2005年にMRとして入社した。最初に配属された愛媛の事業所での経験が、現在の原点になっているという。
「当時の上司が、どうしたら仕事を楽しくできるかを考える天才だったんです。病院への訪問も目標より2軒多く回ったら『今日はイーグルか!』と、ゴルフに例えてほめてくれたり。ベテランの一般社員を、たとえばロールプレイング練習のときに大学病院の教授役にしたり、『エリアリーダー』として抜擢して名刺に肩書を載せられるように本社に掛け合ったり。若手もベテランも“その気”にさせ、仕事を楽しむ工夫をするのが上手でした」
当時の学びが、冒頭で紹介したような、三瓶氏が手掛けるユニークな取り組みのベースになっているのだろう。では三瓶氏が“遊び”をエッセンスにする際、意識していることは何か。