CASE1 ソニーグループ|入社時から抱いていた自律心を呼び覚ます 社内兼業から地域貢献まで“やってみる”をサポートするキャリア・カンバス・プログラム 大塚 康氏 ソニーピープルソリューションズ 執行役員 制度・OP担当 他
ソニーグループではベテラン社員を対象に、人生100年時代を見据えたキャリア形成の包括的支援を行っている。
自らの手で活躍のフィールドを見いだし、行動を促す仕掛けとは。
制度設計と運営を手掛けるキーパーソンに話を聞いた。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=編集部
社員の前にひとりの人として未来図をカンバスに描く
ソニーグループ(以下ソニー)では50代社員を対象に、2017年よりキャリア支援施策「キャリア・カンバス・プログラム」(Career Canvas Program、以下CCP)を実施している。
背景にあるのはベテラン社員の増加だと、ソニーピープルソリューションズ執行役員で、制度・OP担当の大塚康氏は説明する。
「私たちのグループは、戦後間もなくの創業からもうすぐ80年が経過しようとしています。組織は成熟し、50代社員の比率も増加しています。彼らの活躍を、どう支援するとよいかという文脈で生まれたのがCCPです」
不確実で変化の激しい時代といわれて久しい。その証拠に、ソニーもこの20年で事業ポートフォリオを大きく変えた。昨日までの延長上に見るキャリアを当たり前と思わず、社員である前にひとりの人間として、人生の後半戦をどう過ごすかをじっくり考えよう。いま一度、白いカンバスに未来を描き直そうというメッセージが、施策の名称に込められている。
複数の施策からなるCCPは、つながりを持たせることを意識した(図1)。ベースとなるのは、35歳から数年ごとに行うキャリア研修だ。特に50~53歳社員向けの研修「エクスプローラー」は、自分の興味や関心を掘り起こすキャリア探索行動の意欲喚起に比重を置く。
「研修では子どものころに憧れていた仕事や、社会人になって達成感ややりがいを感じた瞬間などを振り返ります。グループワーク中心なので、他の同世代社員の考えが刺激になるのも特徴です」(同EC人事部の坂口武氏)
過去から未来へとメタな視点で自身と向き合い、オリジナルの人生を歩むうえでの道筋を明らかにする。
研修と並んで鍵を握るのが、メンター制度である。エクスプローラーの実施後、受講者全員に先輩社員がつき、次の一歩を後押しする。研修で高まったキャリア自律の意欲を、その場限りにさせないためだ。
「メンター社員は、ほかの仕事との兼務が原則で、人柄や人の成長に関心のある方に担っていただいています」(大塚氏)
初めこそメンターに適任な社員を大塚氏が直々にスカウトしていたが、今は志望者が多いため選考を行うほどだという。50代社員のキャリアコンサルタントの資格取得者が増えていること、またCCPを経てキャリアそのものへの関心が高まったことが、人気につながっているようだ。