CASE 4 サイボウズ 多様な制度に、風土も根づく カギは社員同士、経営と社員の日常的なコミュニケーションの工夫
サイボウズではユニークかつ多様なワークスタイルを導入し、それが社員間の信頼や会社に対する安心感につながっており、組織も活性化されている。
そうした試みの背景には、会社が重視して代々受け継いできた理念と文化がある。制度と文化の両面から見てみよう。
● 人材定着への努力 離職率が28%から3.9%へ
1997年創業のサイボウズは、グループウエアの開発、販売、運用に強みを持つIT企業だ。人の入れ替わりが激しいという業界の常識に漏れず、同社でも2005年当時での離職率は28%と高かった。
ところが、2013 年末時点でのデータでは離職率は3.9%と約7分の1にまで激減(図1)。およそ10 年の間に、選択型の人事制度や他に例を見ない長期の育児・介護休暇制度等を設けてきたことが、人材定着につながった形だ。
「ワークスタイルや人事、評価等のさまざまな制度や工夫は、全て社内の『危機感』からスタートしているといえます。人材の定着を図りたい、時代の変化に応じた多様な働き方を認めるべきだといった、会社が直面したテーマや現場から聞こえてくる提案や悩みから各制度が生まれてきました。社員の働き方、言い換えれば会社との関わり方についての選択肢が増えることで、社員たちの間に安心感が広まり、結果として組織の活性化が図れていると感じています」(椋田亜砂美氏)
● 組織を活性化する制度 自ら自由に選ぶワークスタイル
組織の活性化を支えてきた同社のユニークなワークスタイルの概要をまず見てみよう。
2007年に導入された選択型人事制度(図2)は、ワーク重視型(PS2)、ワークライフバランス型(PS)、ライフ重視型(DS)の3分類からなる。
「育児や介護、また学習など社員それぞれの事情と希望に応じて、自ら選んでもらう制度です」(松川隆氏)
現在のところ、PS2:PS:DSの比率は、74:20:6(%)と、ワーク重視型が多数を占める。
次いで、2010 年に始めた在宅勤務制度を発展させ、「ウルトラワーク」(図3)という制度を定着させた。これによって、働く時間と場所の制限が完全になくなった。
「生産性を落とさないという前提でウルトラワークを選ぶことが可能です。運用は柔軟で、例えば花粉症がひどいシーズンのみウルトラワークで自宅作業中心にしたり、自身や子どもの病気・入院期間のみウルトラワークを利用したりしても構いません」(椋田氏)