第35回 成長支援の要は“絶対にあきらめない”こと 人を知り、人を育て、組織をつくる仕掛け人 杉村元規氏 MIXI 人事本部 人事戦略部 部長 兼 人材採用部 部長
SNS『mixi』や、スマホゲーム『モンスターストライク』といった様々なサービスを手掛けるMIXI。
変化と成長を続ける同社の人材育成をリードする杉村元規氏は、ほぼ独学で人事としてのキャリアを築いてきたという。
一貫して“人”に関わり続け、「組織=人」だと考える同氏の変遷や、仕掛け人としての想いを聞いた。
[取材・文]平林謙治 [写真]=中山博敬
独学で積み上げたキャリアの原点
「わたしの職務経歴書」と題された資料がある。作成の日付は2019年1月16日。MIXI人事戦略部長兼人材採用部長の杉村元規氏が、同社へ転職した直後、人事のメンバーに向けて“自己開示”したものだ。
「当時のMIXIは人事本部ができたばかり。それまで人事の主な機能は各事業部に分散されていて、人事部の役割は新卒採用や全社イベントなどがメインでした。だから、メンバーの経験も採用に偏っていました。そもそも人事パーソンの役割とは何か、どんなふうにキャリアを積み重ねていけばいいのか―― 人事部門を強化するにあたり、私の経験を紹介することでメンバーが考えるきっかけになればと、当時の同僚に勧められてみんなに話をしたわけです」
杉村氏は、その濃密でユニークな人事としてのキャリアを、本人曰く「ほぼ独学」で積み上げてきた。MIXIが“成長の仕掛け人”として期待するゆえんもそこにある。
では、なぜ人事の仕事をしたいと考えたのか。冒頭の経歴書によれば、杉村氏が人と組織に目覚めた原点は大学時代のサークル活動にあった。立教大学の英語会(ESS)。大学公認の名門サークルで120年以上の歴史を誇るという。
「伝統をすごく重んじるんですよ。活動自体は楽しいし、居心地もいいのですが、伝統を重んじているがゆえに活動規定がめちゃくちゃ厳しい。体育会並みでした。たとえばESSの活動には『ディスカッション』(議論)、『ディベート』(討論)、『スピーチ』(弁論)、『ドラマ』(英語劇)と、4つの部門があるのですが、一度決めたら4年間転籍は許されません。また、サークル全体の委員長はドラマ部門の構成員にしかなれないとか、暗黙の掟もありましたね」
杉村氏は、自らサークルの幹部になり、組織を改革しようと考えた。伝統という美名の陰で厳しさに耐えられず、苦しんで辞めていく仲間も少なくなかったからだ。