グローバル調査レポート 第10回 「Global Leadership Development Survey 2014」調査結果より グローバルリーダー開発に「ローカル」傾向あり
2010年に開始され今年で5回目となるグローバルリーダーシップ開発調査(Global Leadership Development Survey)。本調査は米国の調査会社i4cpと米国のマネジメント研修機関AMA(American Management Association)が共同で調査したものである。当初は、企業でグローバルリーダーシップ開発(GLD)を実施しているかどうかに焦点が置かれていた調査内容も、年々少しずつ形を変えた。そこからわかる、グローバルリーダー開発で今意識されつつあるポイントとは。
1 はじめに
AMAはi4cpと共同で2010 年からGlobal Leadership DevelopmentSurveyを実施してきた。2010 年に実施した内容を見ると、その焦点は以下の2点に置かれていた。
1 GLD(グローバルリーダーシップ開発)プログラムを実施しているか
2 グローバルリーダーの育成に必要なコンピテンシーは何か
当時、GLDに特化した育成プログラムを持っている企業はまだ少なく(回答企業の31%)、導入理由や、その育成に必要なコンピテンシーが何かなど、市場の興味が「実施するかしないかの判断材料」を探っている状態であったことがわかる。
それから5年。2014 年2月に行われた今回の調査(世界から集められた1030の回答のうち、従業員1000 名以上の642の回答を対象に集計)では、GLDプログラムを実施している企業は2010 年の31%に比べて44%へと増えた。そして調査の焦点も「いかに効果的にGLDをするか」といった内容に変わってきている。
今回の調査では、「GLDは重要である」と回答した企業が全体の60%に上ったにもかかわらず、自社でそれを現在「効果的に行えている」という回答は21%という非常に低い数値であった(図1)。
こうしたことから、調査後にまとめた報告書も「効果的にグローバルリーダー育成をするため」の内容、重要なコンピテンシー、人選方法、評価方法に焦点を置いたものとなった。
日本国内を見ても、“グローバル人材”を開発する必要性がうたわれ出してから実際に企業が動き出すまで数年かかり、今ようやく次の段階に入った印象がある。当社コンサルタントの話では、5年前と今とでは顧客企業からの依頼に明らかに異なる傾向があり、その傾向は、「明確化」と「実践的」というキーワードに整理できるようだ。
まず「明確化」だが、5年前と比較して最も大きく異なるのが、グローバル人材を育成するうえでの企業の課題が「明確」になってきている点だという。かつては、「育成するために何をすればよいのか」「対象者を選定するにはどうすればよいのか」といった相談を受けていたのに対し、最近では「企業理念の浸透」「具体的な国における異文化・ビジネス理解」「テレビ会議のやり方」「現地法人でのサクセッションプラン」など、企業担当者が具体的な課題を想定し、その解決に向けた方法を相談されることが多くなったというのである。
さらに「実践的」── これは、GLDプログラム等に、実務につながる「実践的」な内容が求められるようになったという意味だ。せっかく知識を学んでも、現場で活用できなければ意味がない。そこで実際に活用する場を設け、結果まで出すことを求めるフィールドトレーニングが増えてきているということなのである。
「明確化」の対象は“課題”だけにとどまらない。企業が育成する対象者も明確化してきている。過去には語学学習やマインドセットの習得などを不特定多数の人材を対象に促していたが、最近では選ばれた一部の人材や、実際に海外赴任経験のある人材など、焦点を絞って行われるようになってきていると、当社では感じている。
今回は2014 年2月に実施した調査結果をもとに、世界の企業が考えるGLDのトレンドに触れると共に、国内市場の現状を当社からの所見を交えて紹介したい。
2 調査から見える4つの重要点
2014 年の調査結果では、次の4点が明らかになった。