CASE2 三井化学|「承認」が組織の活性化につながる 管理職のトランジションを促す研修プログラム「LDP」 飯田正信氏 三井化学 人事部 人材グループ グループリーダー 他
三井化学では初めて部下を持つ管理職を対象に、リーダーシップ開発プログラム(LDP)を導入している。
グループコーチングなどおよそ5カ月間にわたるプログラムを経て、
プレーヤーからライン管理職の役割へスムーズな移行を促す。
内省と実践のサイクルは、ライン管理職のマインドにどう作用するのか。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=三井化学提供
役割変化を促すLDP
化学品製造大手の三井化学にとって、現場マネジャーは経営戦略と業務を橋渡しする重要なポジションだ。
「当社では、2016年度よりキータレントマネジメントを導入しています。毎年9ボックスにて数年間の業績(パフォーマンス)と、将来的に部長クラス以上の人材として活躍できそうかという潜在能力(ポテンシャル)、および熱意の視点で評価を行い、中核人材の発掘・育成を図っています」と話すのは、人事部人材グループグループリーダーの飯田正信氏。
ライン管理職の入り口がTL(チームリーダー、職位はG3/G4で工場では課長に当たる)である。そのミッションは、個人(部下)と組織への働きかけにより、業績を達成すること。メンバーの成長意欲を意識しながら業務をアサインし、組織を導くリーダーとして振る舞えるかがポイントとなる(図1)。着任直後には新任ライン管理者研修を受講し、部下を持つ管理職としての心構えや、理解するべき法令などを学ぶ。だが、それだけでマネジャーらしい振る舞いや思考をマスターできるわけではない。
そこで同社で大きな役割を果たしているのが、着任から半年以上のライン管理職を対象としたリーダーシップ・デベロップメント・プログラム(LDP)である。1回20人程度の少人数制で、5カ月間にわたり行う。
「目的はライン管理職への役割変化に対応してもらうことです。役割が変われば、求められるマインドセットやスキルセット、時間配分も変わってきます。そのトランジションを推進するため、2013年度から導入しています」(飯田氏)
同志と行動変容に挑む5カ月間
LDPの具体的な内容を見ていこう。まず初回の研修では、リーダーの役割、マネジメント手法、コーチング・スキルの理論などを講師から学ぶ。また、事前に職場のメンバーに行った360度評価の結果から、ペアワーク等を通じて自身のマネジメント課題を抽出し、期間中の目標と月次のアクション目標を設定する。
第2回~第4回の研修では、受講者を5人1組のグループに分け、目標に対して直近1カ月で行ったことをそれぞれが発表、講師やメンバーからフィードバックをもらう「ピットイン」(グループコーチング)を行う。
「グループ分けをする際は、部署や事業所などが異なるメンバーにします。職場環境は違っても、マネジメント課題には共通点があるので、互いに共感し合い、学び合う関係を築くこともLDPの目的です」(人事部人材グループの鳥羽陽子氏)
日々のアクションの達成度合いは、アクションチャートで振り返ることができ、内容はグループメンバーに共有される。また講師は、定期的にメールマガジンを配信し、内省と行動変容を促すなど、研修参加者が日々目標を意識するための工夫も欠かさない。
「あえて目標を部下に直接宣言する受講者もいます。そうすることで、より、目標達成への意識が高まるでしょう。ピットインでは、当月の自身のリーダーシップを振り返り、メンバーのフィードバックを参考にして、次月の目標に備えます。時に他のメンバーのやり方を自分のチームに取り込んだり、アレンジしたりすることもあります。LDPでは、周囲の知恵を活かし、リーダーとしてのOS(Operating System)を更新する意味で『OSハント』とよばれています」(鳥羽氏)