働く一人ひとりのWell-doingを支援し組織の力につなげる 石垣のように個を活かす、ロート製薬のWell-being経営 髙倉千春氏 ロート製薬 取締役 CHRO
医薬品、スキンケア大手のロート製薬は、他社に先駆け複業・兼業を解禁するなどこれまで独自路線で様々な人事施策を繰り出してきた。
そして現在、同社が力を入れるのが、Well-being経営に紐づく、“個”に根差した人事施策の実践である。
社員一人ひとりが輝き、個性を発揮する組織はどのように築かれるのか。
取締役 CHROの髙倉千春氏に話を聞いた。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=中山博敬
Well-beingはWell-“do”ingである
19世紀末に胃腸薬からスタートしたロート製薬。それから目薬などOTC医薬品にスキンケア、食の分野へと事業領域を広げ、近年は再生医療にも力を入れる。事業を通じ人の健康にまなざしを向け続けてきた同社は、経営自体もまたウェルビーイング(Well-being)を基調としている。
あらゆるステージにおいて誰もが心身共にイキイキと笑顔に溢れる社会を築くことを目指す同社で、その担い手となる社員のWell-beingについて、取締役CHROの髙倉千春氏は次のように語る。
「最近よくWell-“do”ingあってのWell-beingだと考えるんです。『幸せは歩いてこないから自ら歩いてゆく』というような歌詞もありますが、Well-beingに至るまでのdoingこそがやりがいや充実感につながるもの。ですから、大事なのは主体的に何をするかであり、そのdoingがキャリアになっていく。そしてdoingの先にあるのがWell-beingだと考えています」(髙倉氏、以下同)
Well-beingに不可欠なのが、“つながり”だ。人は互いに影響し合う関係であり、誰かと共に生き、社会との関わりを通じて社会全体の豊かさへと“つながって”いく。ロート製薬が「総合経営ビジョン2030」で掲げる、“Connect for Well-being” のスローガンそのものだ。
「コネクトには3つの意味合いがあります。企業として世界中の人たちのWell-beingに応えるには、イノベーション創出は欠かせません。このとき鍵となるのは共創です。ヘルス&ビューティーに食、再生医療と、それぞれの事業の連携によって新しいものを生み出せるのではないか。これが1つめのコネクトです。そして、私たちの他にも社会のWell-beingに取り組む組織はたくさんあります。研究機関も含めて社外の様々な人や組織とつながり、共創を図っていくというのが2つめ。そして3つめのコネクトは、社内外問わず共創を担うのは人ですから、信頼でつながりを築いていくということ。事業、組織、人をつなげていくという思いをスローガンに込めました」
“個”を活かす4つの施策
Well-being経営という同社の試みは、突然始まったわけではない。創業当時から社員のバイタリティを大切にし続け、価値行動規範を表す「7つの宣誓」には、働き手の幸せと自律を願い、イキイキとした組織を目指す決意がうかがえる。
「社員のWell-beingに迫ると、その人自身が人生を通じ、何を実現しようとしているのかに行きつく。キャリア自律と不可分なのです」
それはつまり、多様な“個”を尊重し、自律と成長を促すことで会社の成長につなげるという、同社のWell-being経営の概念にもつながる(図1)。「社員である前に、“○○さん”という一人ひとりを認め合う会社」という組織風土も、その基盤になっているといえるだろう。
そして同社が目指すのが、一人ひとりの社員に目を向け、多様な“個”を尊重することで、“全員参画”の経営につなげることである。そのドライバーとなるのが、次に挙げる4つの施策だ。