おわりに 個々の強みや想いを組織やマネジャーが引き出せるか
Jun-Ju / PIXTA
企業の成長に不可欠な「個を活かす」ということ
正解が誰にもわからない現代、変化やスピードに対応しながら企業が成長し続けるには、多様な個を活かし、一人ひとりに活躍してもらうことが不可欠―― 。人的資本経営が重要視されるに伴い、そのような考え方が広まっている。だが、日本企業の多くは従来、新卒採用、年功序列、終身雇用制度のもと、一律の人材育成、人材活用を行ってきた。「出る杭は打たれる」という風潮もあり、一人ひとりを活かすという視点はあまり持たれていなかったのではないだろうか。
そんななか、「個を活かす」ためには何が必要なのか。組織、マネジャー、個人の観点で本特集の内容から振り返ってみたい。
<組織>
①個を知る仕組み
個を活かすためには、個々の強みや志向性を理解する必要がある。事例で紹介した企業には、その仕組みが根付いていた。たとえばSansan(CASE2)は、入社直後に行う「強マッチ研修」で、自身の強みを各自が分析し、プレゼンする。また、タレントマネジメントシステムにはキャリアサマリーや職務経歴、趣味や自身の強みといった情報が掲載、全社公開され、互いを知るために活かされている。
サイバーエージェント(CASE1)は、業務経験や資格など定型的な情報だけでなく、人事面談で出てきた「やりたいこと」などの定性的な情報もデータベース化している。そのため、仕事において本人の意思や強みを大切にしたアサインをすることができるという。
名古屋大学の鈴木智之氏(OPINION3)は、「組織が個を活かすためには、まずは個をよく理解することが大前提」という。その際、「パーソナリティ」の視点を取り入れることも有効だろう。互いを知るからこそ、活かし、活かされることができる。