CASE3 ガイアックス|「邪魔をしない」ことが個を活かす鍵 フリー・フラット・オープンがつくる自律型組織 荒井智子氏 ガイアックス ブランド&カルチャー推進室責任者
「人と人をつなげる」をミッションに、ソーシャルメディア領域をはじめとした様々な事業を展開するガイアックス。
同社の自由な働き方は「ティール組織」と評されることも多い。
個人の自主自律を尊重する同社は、どのようにして現在の在り方に至ったのか。
組織づくりの要諦や制度について聞いた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=ガイアックス提供
「邪魔しない」が個を活かす大前提
ソーシャルメディアやシェアリングエコノミー、DAOといったコミュニティの領域を中心に多様な事業を展開するガイアックスは、とにかく自由な会社として名高い。「日本版ティール組織」と紹介されることも多く、実際、極めてティール的な自主自律型の組織スタイルを貫いている。しかし、同社ブランド&カルチャー推進室責任者の荒井智子氏によると、最初から「ティール組織になること」を目指してきたわけではないという。では、その“最初”は何から始まったのか。
「1999年に24歳で当社を創業した代表の上田(祐司氏)は、ビジネスという形で世の中に価値を提供することが、好きで、好きでたまらないんですね。好きなことだからこそ、自分がやりたい事業を、自分のやりたいようにやることが人生で一番楽しいことだと考えています。学生時代にアルバイトもいろいろとやったけれど、焼き芋屋さんが一番面白かったと言っていました。どこから仕入れて、どこでどんなふうに売るか、全部自分で創意工夫できるのがいいんだ、と。新卒でコンサル会社に就職してからも、副業として、焼き芋屋を続けるぐらい楽しかったそうです(笑)。
本来、人はみんな、そういう情熱を秘めているはずだという彼の信念が組織運営に反映されて、ガイアックスは、ガイアックスになっていきました。一人ひとりが自分らしくやりたいようにやれている状態が、会社にとっても一番いい。メンバーの力が最大限に発揮されて、成果につながると、私たちは考えています」
荒井氏の表現を借りれば、個人の願いや才能に「会社が乗っからせてもらう」のが、同社のスタンスだといっていい。そこでもっとも重要になるのは、組織が個人を「邪魔しない」ことだ。会社があえて指示したり、リードしたりする必要はない。一人ひとりがやりたいことに没頭できるように、邪魔になる要素を徹底的に排除する。それが、ガイアックスにおける「個の活かし方」の大前提となっている。
フリー・フラット・オープン
「『邪魔しない』は、当社のなかでも本当によく使われる言葉です」と、荒井氏は証言する。
「従来の組織では一方的にゴールを課し、情報統制を敷くなど、社員が経営サイドの意に沿って動くようにマネジメントが行われると思います。当社のメンバーには、そうした組織の都合から解放されて、事業にとことん打ち込める喜びを、自分でつかみ取ったり、感じ取ったりしてほしい。だから、たとえば経営会議の議事録なども個人のプライバシーに関わる内容以外は全部公開していますし、会議予定もオープンなので、上司が出る会議に自分も出たいと思ったら手を挙げて同席する、なんてことも珍しくありません。意思さえあれば、ほしい情報や機会にアクセスできる環境があるわけです」
こうした個人の活躍を邪魔しない環境づくりのすべてに通底するのが、「フリー・フラット・オープン」のカルチャーである(図1)。