企業事例② キリン 粘り強く対話の場を持ちトップも巻き込み理解者を増やす
キリンビールが組織活性に向け、2005年に始めたV10推進プロジェクトは、さまざまな対話の場を持ち、多くの理解者を得ることに成功した。その実績と思いは、2013年1月にキリンホールディングスの傘下に設立される国内綜合飲料新会社、キリン株式会社へと引き継がれる。これまでの組織開発のソフト、ハード両面における戦略について話を聞いた。
めざすのは「お客様にいちばん近い会社」
2013 年1月、キリンホールディングスの傘下に、国内綜合飲料新会社として、キリン株式会社を設立した。キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの国内飲料事業会社3社を取りまとめ、ここに製造、マーケティング、営業部隊を除く会社機能が集約されている。
2つの事業本部のうち1つが、企業の利益や競争力の向上とともに、社会的価値の創造を両立させる役割を担うCSV(Creating Shared Value)本部だ。その中の「ブランド戦略部」では組織開発を目的とした社内のインナーブランディングを行っている。
その担当となった早坂めぐみ氏は、2008 年からキリンビールで「V10 推進プロジェクト」を専任で担当してきた人物だ。
V10 推進プロジェクトとは、キリンビールが2001年にビールシェアで首位を明け渡したことをきっかけに、社内の風土改革のために始まったプロジェクトである。
2005 年から、さまざまな手法を取り入れるハード面、また全国で7年にわたり、トップを巻き込みながら継続し続けたソフト面、その両面で工夫を凝らし、成功している組織開発プロジェクトといえる。2009 年のキリン首位奪還の原動力ともなってきたはずだ。
このプロジェクトの目的について、早坂氏はこう語る。「 会社の10年後のありたい姿(Vision)を考え、大切にしたい価値観(Value)の元に思考、行動し、結果としてお客様にいちばん近い会社(Victory)になる。そのために『社員一人ひとりが自ら考えて行動する風土づくり』『現場の意見が経営に活かせる仕組みづくり』に取り組みました」
ここから早坂氏を含む専任チームによる、本格的な組織開発への取り組みが始まった。