企業事例2 小林製薬 “感謝の可視化”や全員参加の提案改善でイキイキ働く仕組みをつくる
「“あったらいいな”をカタチにする」のキャッチコピーで知られる小林製薬。同社は『熱さまシート』、『のどぬ~るスプレー』などの独創的な製品で、多くのファンを惹きつけている。現在、同社はコーポレートブランドを高める取り組みを進めており、それが組織の活性化と、独自の“ほめる文化”の醸成につながっている。同社の取り組みを紹介する。
創造と革新を支える並外れた顧客志向
医薬品、口腔衛生品、衛生雑貨品、芳香消臭剤、栄養補助食品、食品、家庭雑貨品などを提供し、医薬品メーカーとして幅広い事業領域を持つ小林製薬。その製品群は多彩なだけでなく、ユニークなものが多いことでも知られている。
同社の商品戦略は、競争相手がひしめく「大きな池の小さな魚」になるのではなく、今までにないお客様の“あったらいいな”をカタチにした製品で自ら新しい「池(市場)」を創造する。そして「小さな池の大きな魚」として「池」を拡大しながら高いシェアを確保していく方法を得意としている。結果的に、消費者はもちろん、小売店も喜ぶような商品である。
こうした商品を生み出す同社の企業理念は、「我々は、絶えざる創造と革新によって新しいものを求め続け、人と社会に素晴らしい『快』を提供する」というもの。顧客自身でさえ気づいていない、潜在的なニーズをいかにしてキャッチするか。そのためには、徹底的な顧客中心の考え方、同社内で頻繁に飛び交う言葉でいうと“並外れた顧客志向”が必要になる。この言葉は同社の重要な価値観として、行動規範の最初に挙げられている。
絶えざる創造と革新を続け、並外れた顧客志向を実践するためには、同社の人材一人ひとりが経営理念を理解し、行動として実践していかなければならない。そうした行動を引き出すために、同社では2000 年に制定した行動規範を2007年に改訂し、より実践しやすい形にした。
たとえば、社員には行動規範として、「Simple、Clear、Speed」の実践が求められる。消費者は製品を購入する際に、10秒程度で買うか買わないかを決めるという。製品開発においても、単純で、わかりやすい内容と、素早い決断が求められるし、営業活動においても、わかりやすさやスピード感は必要だ。
もう1 つの行動規範、「自考、自決、自実、自責」は、その字の如く、社員一人ひとりが自ら考え、決断し、責任をもって率先して実行するということだ。
こうした行動規範は経営理念とともに社員手帳に記載され、全社員に配布されている。社員は毎朝の朝礼で経営理念とともに唱和し、心に刻み込んでから1日の仕事を始めるのだ。
会社でめざすコーポレートブランド向上
小林製薬の『サワデー』や『アンメルツ』などのファンは、そのブランドを信用して商品を購入していく。たとえ小林製薬という企業そのものを十分認知していなくても、商品のブランド力で購入をするという消費者は、少なくなかったはずだ。