CASE2 Sansan|強みを活かし、結集する 目指す方向性を共有し、個々の強みを組織の強みに 平山 鋼之介氏 Sansan 人事本部 Employee Success部 部長
「強みを活かし、結集する」をValues(行動指針)の1つに掲げ、社員が互いの強みを活かし合いながら業務に臨んでいるのが、働き方を変えるDXサービスで知られるSansanである。
創業15年で社員数十名から1,200名規模の組織に急成長した同社の「個々の強みの活かし方」について、人事本部Employee Success部部長の平山鋼之介氏に聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=Sansan提供
強みを活かすことで最短で成果に結びつける
Sansanには「Sansanのカタチ」という企業理念がある。Mission/Vision/Values/Premiseで構成され、8つあるValues(行動指針)の1つに「強みを活かし、結集する」を掲げている(図1)。同社はValuesを2007年の創業時から設定しており、これまでに10回以上の見直しを行ってきた。「強みを活かす」という言葉がValuesに追加されたのは2010年のことだ。Sansan人事本部Employee Success部部長の平山鋼之介氏は「当時の社員数は、ちょうど社名と同じ33名(笑)。限られたリソースで最短で成果を出すために、それぞれが持っている強みを活かすことに着目しました」と話す。
社員数が約400名に増え、翌年に東証マザーズ上場を控えた2018年には「強みを活かす」から「強みを活かし、成果を出す」に変更された。
「このころは、会社が考える『個人の強み』を『肩の力を入れずに無意識にできること』と定義していました。解説文には『学習して身につけたスキルではなく、人それぞれの性質のようなものです。弱みを克服することに重点を置くのではなく、目の前の仕事に自身の強みや同僚の強みを活かし、それぞれの持っている能力を最大限に発揮することでスピーディーに成果を上げていくのです』と記されています。当社はもともと成果を上げることにコミットしており、スピーディーに成果を上げるには個々の強みを活かすことがもっとも速いと考え、このValueを加えました」(平山氏、以下同)
現在の「強みを活かし、結集する」に変更したのは2021年。社員数が約1,000名になり、東証一部に上場した年に当たる。
「このときの議論では、それまで強みとして定義してきた『肩の力を入れずに無意識にできること』に加え、個々に培ってきたスキルや経験、人脈なども含めて強みとして捉えるよう、見直しを行いました。それぞれの強みを結集し、組み合わせることで新たな解決策や道を切り拓く力を生み出せると考えたからです」
個々の強みを言語化し社内で共有・活用する
個々の強みを発揮するために、Sansanでは一人ひとりの社員が自身の強みを知り、互いに共有する取り組みを行っている。早くから強みとして定義してきた「肩の力を入れずに無意識にできること」については、ストレングスファインダー(人の資質を34の資質で評価するテスト)とエニアグラム(人の性格の傾向を9つに分類するテスト)という2つのツールを活用することで、個々の社員の資質や性格を言語化し、社内で共有している。さらに、その人の持つスキル、経験、人脈なども強みに加えた2021年以降は、職務経歴やキャリアサマリーなどもタレントマネジメントシステムに登録し、誰もが閲覧して活用できる形にした。こうして言語化・共有化された強みを、Sansanでは「強マッチ」とよんでいる。なお、同社の制度は親しみやすいネーミングが特長となっているが、これは社員に制度を積極的に活用してもらうための工夫である。
強みを言語化・共有化するために、新卒・中途を問わず入社後すぐに受講するのが「強マッチ研修」だ。研修の前半は、ストレングスファインダーとエニアグラムで自身の強みを把握。さらに「強みを知るワーク」として、「人生で一番成果を出したストーリー」を語り、その内容から聞き手が本人の強みをフィードバックするワークショップを行う。後半は「自分のトリセツを作る」というテーマで、自分の強みをまとめたり、キャリアサマリーや職務経歴などを実際にタレントマネジメントシステムに記載し、社内で共有する。
また、新卒の新入社員研修では、グループでアウトプットを作成してプレゼンを行うワークがある。そこではメンバーの強マッチを活用して役割分担を行っており、互いの強みを活かすトレーニングにもなっている。
このように入社した時点で自身の強みを把握し、社内で共有することにより、すぐに強みを活かした働き方が可能になるという。取材に同席したブランドコミュニケーション部の佐久間麻耶氏は入社4カ月だが、自身も受講した強マッチ研修について「一般的な自己紹介だけでは表面的な内容しかわかりませんが、事前にお互いのより深い部分を知ることができるので、コミュニケーションをすぐに深めることができます。そのため、初めての人とも仕事がしやすくなりますし、上司とのキャリア面談でもスムーズな話し合いができます」と話す。
平山氏自身も、タレントマネジメントシステムに「マネジメント育成、組織づくりが強みです」と記載したところ、現場のマネジャーから部下のマネジメント育成の相談に乗ってほしいと依頼が来たり、職務経歴を見た社員から「その会社に営業したいので、力を貸してほしい」と打診されるなど、強みを共有することの有効性を実感している。