ビジネスリサーチラボ オンラインセミナー 「サステナブル人事」入門~持続可能性を実現するための人事とは~
SDGsやサステナビリティという概念をよく耳にするが、「具体的なイメージが湧かない」、あるいは「必要性を感じない」という人事担当者も少なくないのではないだろうか。
本稿では、2022年6月13日に開催されたビジネスリサーチラボ主催のオンラインセミナーから、
持続可能性に貢献する「サステナブル人事」の在り方について、同ラボコンサルティングフェローの神谷俊氏、代表取締役の伊達洋駆氏の講演を抜粋して紹介する。
[取材・文]=田中 健一朗 [写真]=ビジネスリサーチラボ提供
70年代に生まれたサステナビリティ
サステナビリティとはいつごろから言われ始めたものなのでしょうか。1972年、スイスのシンクタンク「ローマクラブ」が報告書のなかで「21世紀後半に人類は滅亡する」と資源に対するリスクを指摘したことに端を発します。その後、80年代には国連で「持続可能性」という言葉が使われはじめ、「持続可能な開発」も言及されました。90年代には「持続可能な開発」について、より具体的に企業活動と結びつけた議論がなされ、2001年にはSDGs(Sustainable Development Goals)の前身となるMDGs(Millennium Development Goals)が国連より提示されます。ただし、具体的なアクションプランは提示されているものの、対象を「途上国」に限るものでした。
そして、2015年により具体的で全世界共通の目標として提示されたのがSDGsです。持続可能性を求める潮流はだんだんと強まっている、そんな時代に私たちは生きているのです。
HRM目標は多元化・長期化へ
これらを踏まえて台頭してきたのが、サステナブルHRM(サステナブル人事)です。サステナビリティへの知見をいかに蓄え、アプローチの手段を持っているかが、キャリアの評価としてかつてないほど求められています。実際に、サステナブルHRMの文献数がSDGs提唱から急速に増加し、多くの研究者によって言及されていることからも、その重要性がうかがえます。
なお、サステナブルHRMは学術的に図1のように定義されています。採用数やエンゲージメントの指数など、多くのHRM目標がありますが、それらが多元化し、様々な領域に跨っていく。そして、長期的な見通しも求められる。この、「HRM目標の多元化・長期化」こそが、サステナブルHRMにおける最大のポイントです。
KPIとなる3つの資源
サステナブルHRMでは、「環境資源」「社会資源」「人的資源」の3つの領域への貢献・維持・再活用が期待されます。たとえば、「環境配慮の知識」や「環境に対するポジティブアクション」などの強化、シニアや外国人など多様な労働者とのコミュニケーション能力を育成するプログラム、さらにはリスキリングのような雇用の継続を前提としたキャリア開発も求められるでしょう。