おわりに Whyから始まる経営人材育成
「経営人材育成」は、企業の組織人事における課題として必ず上位に上がってくるテーマだ。一方で、今すぐに手を打たなければ組織が大きく変わってしまう類のものではない。だからこそ次の世代に先送りにされ続けてきた一面がある。
本特集の監修者である立教大学経営学部助教の田中聡氏はOPINIONでこのように述べた。
確かに常に課題視されてきたという点でいえば、「経営人材育成」は真新しいテーマではないだろう。しかし一方で、今こそ腰を据えて取り組むべき時機であると感じている方も多いのではないだろうか。
今回紹介した4社の事例は、それぞれに注目すべきポイントがある。以下にまとめた田中氏の解説を元に、「経営人材育成」の要諦を探りたい。(以下、各CASE解説文=田中聡氏)
※ 本稿では、「人材/人財」の表記をすべて「人材」で統一しています。
CASE1 NTT|目的と施策が一貫したデザイン
NTT Universityが、一般的な企業内大学(コーポレートユニバーシティ)と一線を画すのは、「ハードアサイン」をベースとする点です。同社の取り組みは、日常業務と切り離した教育研修ではなく、経営課題に直結する重要なポジションでのリアルな経営経験を通じた学びを重視しています。また、アサインして終わりではなく、上層部による定期的なメンタリングや経営知識の習得をサポートするプログラムなど、経験を学びにつなげるための仕掛けが随所に施されていることも特徴です。
さらに、注目すべきは人材の評価についてです。一般に、業務での成果が評価されがちですが、同社では「経営者としての成長度合い」を評価する仕組みが運用されています。このように、経営人材の育成という目的と、人材の選抜・育成・評価の各施策が寸分の狂いなく首尾一貫してデザインされている点が、本取り組みの特筆すべき特徴といえるのではないでしょうか。