CASE4 富士通|全世界のタレントを早期選抜・早期育成 カルチャーの違いを乗り越え、グローバルリーダーの成長を加速 西明尚隆氏 富士通 Senior Director Employee Success Unit
2014年、経営人材の選抜・育成プロセス「タレントマネジメント」にいち早く着手した富士通。
主要ポジションの後継者、そして次世代リーダーとなるハイポテンシャル人材を、グローバル共通体系で選抜、育成してきた。
制度の全体像、そして8年間の軌跡についてSenior Director Employee Success Unitの西明尚隆氏に聞いた。
[取材・文]=西川敦子 [写真]=富士通提供
若手、中途採用者―― あらゆる層からフラットに選抜
2014年、本格的なグローバル体制に舵を切った富士通。同年、主要ポジション後継者の選抜・育成プロセス「タレントマネジメント」もグローバルで統一を行った。
「世界を5リージョン体制に再編し、一定の層以上を対象にグレードを統一しました。さらに海外拠点ですでに行われていたタレントマネジメントを世界共通で導入することになったのです」とSenior Director Employee Success Unitの西明尚隆氏は当時を振り返る。
現在、富士通のタレントマネジメントの対象は2つの階層に分かれている。1つは本部長など主要ポジションの候補者。そしてもう1つは、次世代リーダーと目されるハイポテンシャル人材だ。選抜はどのように行われるのだろうか。順にプロセスを追ってみよう。
主要ポジション候補者やハイポテンシャル人材を選抜する際、目安となるのは常務レベルの人材に求められるプロファイルだ。「戦略的思考」、「複雑な状況への対処」、「コラボレーション」、「ビジョンと目的の推進」、「多様な状況への適応」などのコンピテンシーがある。
「必要なのは複雑性の高いマネジメントを実行する力。たとえば、既存事業と並行し、顧客の新たな事業をストーリーをもって創造する能力、グローバルに成長を生み出すといった能力です」(西明氏、以下同)
プロファイルは育成のゴール、つまり、タレントたちが身につけるべきマインドセット、スキルセットでもある。会社側はゴールを目指して強化を促し、効果を確かめては育成方法を見直す。一連のサイクルをスピーディーに回すことで、成長スピードが高まる。
タレントの選抜に当たるのは各本部長だ。将来的な課題を踏まえて全世界からタレントを選び出し、グローバル会議「タレントレビュー」で検討する。とはいえ、主要ポジション候補者はともかく、ハイポテンシャル人材を組織全体から人力だけで探すのは難しい。大規模なアセスメントを実施し、そのうえで高スコア群から事業部長が候補を検討することが実際は多いという。いずれにせよ、最終的には本部長が決定する仕組みだ。
この選抜においては、国籍や性別はもちろん、プロパー、中途入社といった区別もせず幅広い層からふさわしい人材を探すという。
「タレントに占めるキャリア(中途)採用者の比率はむしろ高まっています。転職者にはアグレッシブな人が多く、チャンスに対する志向も強いのかもしれません」
同社では数年前からキャリア採用に力を入れており、昨年は国内で約300人の中途採用者が入社している。入社後はオリエンテーションを実施し、社長による中途採用者向けのタウンホールミーティングを年に数回行うなど、オンボーディングにも努めているそうだ。
「タレントレビュー」で選ばれた本部長候補とその育成については、さらに社長をはじめ経営陣も参加するグローバル会議「TOP TALENT REVIEW」で検討される。開催は年3回、育成計画や進捗状況などを共有する。候補者本人を会議の場に呼び、社長が直接、話をすることもある。
グローバルリーダーの特訓「GKI-A」
実際の育成体系はどのような仕組みなのだろうか。同社ではグローバル共通でそれぞれのレベルに応じ、経営学の講座やリーダーシップ研修など多岐にわたるカリキュラムを展開している。強化ポイントは図1のとおりだ。