CASE3 JT|一人ひとりの強化ポイントに合わせた配置で成長をブースト 内定時から始める早期育成施策 藤田欣晃氏 JT 人事部 人財マネジメント 担当部長 他
JTでは次世代経営人財候補を内定時から選出し、
集中的に投資するシステムを前身の日本専売公社時代から運用してきた。
現行の制度では人事部が主体となり、
現場と連携を図りながら候補者の成長を多面的に支援。
その期間は最長で20年近くに及ぶ。
40代での執行役員登用を視野に入れた、オーダーメイドの育成手法とは。
[取材・文]=たなべやすこ [写真]=編集部
入替制でポテンシャルを見極め
JTではJT-Next Leaders Program (以下NLP)を2013年より実施している。本社人事部主導で若手・中堅社員を抜擢し、経営トップのコミットメントのもと、次世代幹部候補の成長支援を行うものだ。
同社の経営人財候補の育成支援の歴史は長い。人事部人財マネジメント担当部長の藤田欣晃氏によれば、系譜の発端はJTの前身、日本専売公社時代にさかのぼる。
「当時は国家公務員と同様、将来の幹部登用を前提とした採用枠がありました。一般社員と比べ昇進スピードが速く、最終的には重職に就くキャリアパスが確立されていました」
1985年の民営化以降、採用時点でエリートと一般を区別する方式は撤廃されたが、将来の経営人財候補を早期に確保して集中的に投資する制度は、時代に合わせて変化させながら続けてきた。
現在運用するNLPでは、「グローバルに活躍し得る40代前半の執行役員候補」および「新規事業を牽引する事業部門長候補」の継続的な輩出を目指す。
「以前の育成制度は、現場にもまれながら経営者としての姿勢を自然と学び取る、いい意味で自律的、悪く言えば放任主義的なところがありました。しかし外部環境の不確実性が高まり、過去の成功体験に基づく経営が成り立たなくなっています。加えて変化のサイクルも速く、柔軟な発想でスピーディーにビジネスを動かしていかなければなりません。そのため経営的視点を持ち合わせた人財を、安定的に送り出せる仕組みを必要としていました」
NLPでは図1のように、内定時から40歳前後まで年代別に4つのステージを設け、現在80人前後の社員がその対象となっている。それぞれ支援期間が定められていて、次のステージに進むには選考を通らなければならない。すなわち、内定時にCandidateと認定されたとしても、Juniorでは落選の可能性があるということだ。
だがどのステージも、職歴や一定の条件を満たせば誰でもエントリーできる。よって、入社して数年後にJuniorでエントリーしてNLPの対象となったり、Candidateの社員がJuniorでもれてもSeniorで復活する場合もある。また近年はキャリア採用の強化を図っていることもあり、中途入社の社員がMiddleやSeniorのステージからNLPに加わるケースも見られるという。
「ステージが進むにつれ、認定する人数は少なくなっていきます。一方で、社員のポテンシャルが開花するタイミングや機会には個人差がありますから、各段階で間口を設けることで、流動性を担保しています」