CASE2 ユーザベース|共創を促す共通言語 多様で異能な人材が1つの目標に向かうためのOKR 村樫祐美氏 ユーザベース グループ執行役員 カルチャー担当
ユーザベースは2016年よりOKRを採用し、21年から全社導入した。
当時、日本においてほとんど情報はなく、関連書籍は1冊のみ。
グループ執行役員カルチャー担当の村樫祐美氏に、導入の背景や現状の課題について伺った。
ユーザベースといえば、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」を思い浮かべる人が多いかもしれない。ただ、祖業は経済情報プラットフォームの「SPEEDA」。現在も「SPEEDA」「FORCAS」「INITIAL」などのSaaS事業も力強く成長し、同社の躍進を支えている。
同社が最初にOKR(Objectives and Key Results)を導入したのは2016年。主導したのは、現在共同代表Co-CEOを務める佐久間衡氏で、当時はSPEEDA日本事業の担当役員だった。なぜ佐久間氏はSPEEDA事業でOKR導入を考えたのか。それを説明するには、まずオープンコミュケーションを重視する同社のカルチャーを理解する必要があるだろう。グループ執行役員カルチャー担当の村樫祐美氏は次のように明かす。
「私たちが大切にする価値観(図1)の1つに『異能は才能』があります。人はそれぞれ違う価値観や考えを持っています。それを前提として、パーパスを実現するために多様な意見やアイデア、情熱を組み合わせながら想像以上のサービスが生まれ、顧客も喜ぶという考え方です。
異なる価値観を持った人たちが同じ目標に向かって進むために必要なのが『対話』です。それゆえ、ユーザベースはかねてからオープンコミュニケーションを重視してコストをかけてきました」
組織が小さいうちは、経営陣やリーダー、メンバーとの個々の対話によって方向性の統一ができていた。しかし、SPEEDA事業が100人強の組織に拡大したあたりから、直接対話するだけではカバーしきれない部分が目立ち始めたという。
「人数が増えるにつれ、なぜ今期はこの目標を掲げているのか、あるいは隣のチームはいま何を目標にやっているのかが伝わりにくくなり、事業部内で情報格差が生じ始めました。情報格差があると、個人やチームの仕事が全体の目標に紐づいていないように見えたり、お互いの仕事が見えないことでチームやメンバー間の自発的な協力が起きづらくなったりします。そうした問題意識から佐久間が注目したのがOKRでした」(村樫氏、以下同)
個人の目標達成を管理するMBO(Management by Objectives)は、一般的に目標の設定や成果の確認も上長と本人だけの閉じた形で共有されることが多い。一方、目標(Objectives)を設定して、それに対して主要な結果(Key Results、以下KR)を管理するOKRは、全社の目標を個人の目標につなげやすい。また、全社、チーム、個人一人ひとりのOKRを会社全体で共有するという特徴もある。組織拡大によって縦でも横でも目標共有のハードルが上がり、コミュニケーションに費やす時間や労力が増大していた同社にとって、OKRは魅力的な仕組みだった。
OKRの「あるべき」にとらわれない
2016年当時はOKR導入企業も少なく、決まった型はあってないようなものだった。そこで佐久間氏は、「管理ではなく、意義と対話によるマネジメント」「自分でゴールを決めることによるやり切る力」「目標や進捗のオープンな共有による、自発的な共創」という3つの方針を決めたうえで、トライ&エラーでオリジナルの仕組みをつくっていった。