CASE.4 テンポスバスターズ 多様性が“自然”な職場年齢にこだわらず評価し、成長を促す 「戦力になるシニア」と働く
「従業員の3人に1人が60歳以上」。
高齢化社会の先端企業ともいえるのが、テンポスバスターズだ。
飲食業向けのさまざまな支援事業を行う。
2005年、厚生労働省・高年齢者雇用開発コンテストで部門別賞(能力開発部門)に入賞。
「何歳になっても成長したい」と思わせる、独自な人材育成を取材した。
いくつになっても能力開発
飲食プロデュース事業を展開するテンポスバスターズ。全国45店舗を拠点に、厨房機器や食器・調理道具のリサイクル販売事業を展開。さらに飲食業向けポータルサイトや、開業支援、リース・クレジット取り扱い、ステーキやビストロチェーン経営など、「飲食業」をキーワードに多彩な業態を繰り広げる。2004 年から導入しているのが、60歳以上を対象に採用する制度「パラダイスシステム」だ。10 年近く経った今では従業員の3人に1人が高齢者である。最高齢はなんと80歳。「 経験豊か」「真面目」「忠誠心が高い」など、さまざまな長所が評価されるシニア人材。一方、「新しいことに挑戦するのが苦手」「柔軟な対応力に欠ける」といったマイナスの側面も指摘される。再就職先で補助的な役割に回りがちなのは、こうした背景も影響しているかもしれない。
ところが同社では高齢者が若年者と同様、事業の中核を担う。60歳以上の中途採用者には正社員も多いうえ、高齢のパート従業員が優勝をめざし、社内コンテストで若手とスキルを競い合う。人事総務部伊藤航太氏曰く、「シニアがここまで戦力になるとは。正直、当初は予想していなかったんです」
きっかけは本社の所在地である大田区の町工場。70 代を超えるであろう熟練工たちの姿を見た創業者、森下篤史氏(現執行役員)が、改めて定年制に疑問を抱いたところからパラダイス制度がスタートした。
「もともと成果主義が浸透していた会社。年功序列や性別による区別はありませんでした。それなら、募集対象の幅を思い切って60歳以上に広げてみてはどうだろう、と。幸い、改正雇用対策法の実施(2007年10月)以前だったため、『60歳以上限定』を大きく謳う、大胆な募集広告を出しました。まずは、月120時間、週5日以内を条件にスタートしたのですが、相当な数の応募がありました。その後、シニアの比重は急速に増加。今や60歳以上の従業員は全体の29.2%です。
ただ、これだけの人数となると、人材としての質も問われます。趣味的に職場に通われたのでは、困ってしまいますから」「パラダイスシステム」の募集文句にあるのは、「接客の大好きな、テキパキ働く60歳以上」だ。「年下の従業員と同じように、生産性や効率性を上げ、成長するシニア人材でなくては」と伊藤氏は強調する。