CASE3 カインズ|上意下達のカルチャーを脱し、個と個の創発を生む 変化への不安に寄り添い 変わる勇気を応援するカインズ版HRBP 西田政之氏 カインズ 執行役員 CHRO 兼 人事戦略本部長
DX、同業大手の買収―急成長を遂げてきたカインズが人と組織の大胆な改革に乗り出した。
自ら考え、動く「DIYの思想」を核に新しい人事戦略を打ち出す。
キーパーソンとなるのがHRBP(HRビジネスパートナー)だ。
執行役員CHRO(最高人事責任者)兼人事戦略本部長、西田政之氏に具体的な役割や組織体制、そして育成について聞いた。
個の時代における人事改革の担い手
「各事業本部に配置された、戦略思考を持つ人事部長」「事業本部長の人・組織問題における戦略的パートナー」。かつ、「メンバー(社員)一人ひとりに寄り添う伴走者」。
HRBPの役割を明確に打ち出しているのが、ホームセンターを展開するカインズだ。
導入の背景には、同社が進める大胆な改革がある。
2019年に策定した3カ年中期経営計画を受け、2021年9月に新たな人事戦略を打ち出した。旗振り役は2021年6月、執行役員CHRO兼人事戦略本部長に着任した西田政之氏である。
「カインズはお客様の暮らしをより豊かで楽しいものにするため、DIYをキーワードとした生活支援をしています。そこで、コアバリューの1つに掲げたのが、『創るをつくる』。『創る=何事でも自分でチャレンジして形にする』文化を世の中に、そして社会に広げていこう、というもの。
新しい人事戦略も、“DIYの思想”を組織文化に浸透させることを基本コンセプトとしています」(西田氏、以下同)
人事戦略における“DIYの思想”の要諦は、メンバーの自律を促すことだ。自分の頭で考え、自ら動ける人材を育成。組織の成長をスピードアップする。
人事戦略のポイントは大きく3つある。第1は人事戦略本部の組成だ。従来は管理本部の中に人事部があったが、独立した部署として立ち上げた。設置にあたり、それまでの管理的、受動的な業務の在り方を改め、能動的な人事への転換を図ったという。
第2は「DIY HR」である。DIY思想を組織文化へ浸透させることで、メンバーの自律と成長を促し、自己実現目標と組織パフォーマンスのベクトルを合わせ、社会的貢献と社員幸福度の両方が実現できるように支援する。なお、DIY HR は「DIY Career Path」「DIY Learning」「DIY Communication」「DIY Workstyle」「DIY Well-Being」の5つの柱で成り立っている(図1)。