CASE 1 アサヒビール 働きがいのある組織の源泉 自社商品へのロイヤルティと会社に対する信頼
「働きがい」について調査を行うGreat Place to Work®Institute Japanの
「働きがいのある会社ランキング」で、2007年から2012年まで
6年間連続でベスト10入りしたアサヒビール。正社員離職率も1%未満と低い。
従業員が意欲的に働けるよう、どのような取り組みを行っているのか。
人事部長の杉中宏樹氏に聞いた。
● 働きがいを生み出す土壌 商品への愛着と会社への信頼
アサヒビールには働きがいを感じる社員が多い。理由のひとつは「商品への愛情」ではないか。人事部長の杉中宏樹氏は次のように解説する。
「当社の商品は、ビールをはじめとする消費者向けの商材。いずれも身近な商品だけに愛着はひとしおでしょう。さらに言えば、社員は、スーパードライが大好きで、『スーパードライをつくりたい、売りたい』と思って入社した人がほとんどです。“スーパードライ好き”が集まることで、自然と社員のベクトルが揃う。“体育会系”とも言える、一体感、団結感がある組織風土が醸成されたのだと思います」
実際、社内を見ても、「自社商品しか飲まない」という社員が多いそうで、「他の業界では、商品が気に入れば他社のものを買う人もいると聞きますが、当社では考えられないこと。飲食店さんには、まず、自社のビールがあるか調べてから行きますね(笑)」というほどだ。
会社に対する信頼も働きがいに結びついている。経営理念に「最高の品質」を掲げる通り、品質重視を貫いている。その姿勢が、「おいしいだけでなく、優れた品質の商品を提供している」という自負を生む。結果的に、高いロイヤルティーや定着率につながっているのではないかと、杉中氏は分析する。
● 施策1 ブラザー・シスター制度
一方、人事施策による効果も見逃せない。そのひとつが、「ブラザー・シスター制度」だ。
新入社員に対し、5 ~ 8月の仮配属の期間中、職場の先輩社員がブラザーやシスターとなり、1対1で指導したり、相談に乗ったりするというもの。同社の伝統的な新人育成制度として長年活用されている。
新入社員は、最初に集合研修を受けるが、座学の勉強だけでは、学んだ内容を実践に移すことは難しい。そこで、OJTが必要になるが、その際、傍らでわからないことを教えてくれたり、間違いを正してくれたりする先輩がいれば、安心して仕事に臨める。そうした配慮から生まれたのがこの制度だが、実は、教えられる側だけでなく、教える側の教育にもなっているという。
「自分自身が理解していなければ、人には教えられない。だから先輩社員も必然的に勉強することになります。また、後輩の指導を通じ、コーチング研修や指導マニュアルで学んだ内容を、自分のスキルとして身につけることもできます」