OPINION1 HRBPはレーシングドライバー パートナーと連携した戦略実行できる組織風土づくり 藤間美樹氏 積水ハウス 執行役員 人財開発部長
近年、日本でも導入企業が増えてきたHRBP(HRビジネスパートナー)。
ビジネスのパートナーとなる人事のポジションを指すが、日本では例が少ないこともあり、漠としたイメージしか持っていない人も多いだろう。
そこでHRBPの経験が豊富な積水ハウス執行役員人財開発部長の藤間美樹氏に、役割や重要性について解説してもらった。
“御用聞き”と“ビジネスパートナー”の違い
「各事業部、各部門が立てた戦略を理解し、事業の人事課題に対して戦略的なソリューションを提供するのがHRBP。かみ砕けば、部門の人事部長です」
国内外のHRBP経験が豊富な藤間美樹氏は、HRBPをこのように定義する。
日本の大企業では、本社人事の他に、部門人事が設置されている場合が多い。事業部ごと、あるいは研究開発、生産、営業などの部門ごとに人事組織があり、それぞれにマネジャーや担当者、オペレーションのスタッフがいる。こうした従来の部門人事と、近年注目されているHRBPは何が違うのか。
違いの1つは、部門との関係性だと藤間氏は言う。
「従来の部門人事は、人事のルールを事業部や部門に守らせることが主な仕事でした。たとえば『そろそろ目標設定の時期。来月までに完了してください』『中間面談の時期なので実施して』と号令を出して、事業部や部門から『このケースはどうすればいいのか』と問い合わせがあれば、事例集を見て回答します。事業部や部門に対して、『わからないことがあれば対応します』という御用聞きをやっているだけでした。
一方、HRBPは事業部長や部門長のパートナーとして、戦略や課題を共有し、一緒に解決していく立場です。ですから、事業部や部門の戦略会議やリーダー会議に参加することもあります」
「御用聞き」と「戦略実現のパートナー」は、どれだけ違うものなのか。藤間氏が武田薬品工業で経験した例を紹介しよう。同社はナイコメッド買収を機にグローバルのメガファーマとなった。各リージョンや部門ごとに組織があり、藤間氏はコーポレート部門(経理や法務、人事など)のHRBPだった。
「あるとき法務のグローバルジェネラルカウンセルに呼ばれて、『将来の幹部を育成するために、グローバル法務でリーダーシップ研修をやってほしい』と言われました。御用聞きなら、そのままグローバルリーダーを育成する研修を用意して終わりだったでしょう。しかし、このリクエストには背景がありました。
国によって法律が異なるため、それまで法務はグローバル化していませんでした。しかしグローバル規模のM&Aという経営戦略を実行すると、国をまたいで契約書をチェックする必要が生じます。ヒアリングを重ねた結果、そうした状況が見えてきて、『グローバル連携ができるリーダーの育成』が本当の課題だとわかりました」
その課題を解決するため、グローバル連携のリーダーシップ研修プログラムをつくるプロジェクトを発足。藤間氏は各リージョンのヘッドをそのプロジェクトに巻き込み、プロジェクトを進めること自体がグローバル連携になる仕掛けをつくった。ただの御用聞きではなく、パートナーである法務部門の戦略を理解していたからこその人事施策だった。
HRBPとCoEはドライバーとメカニックの関係
HRBPは、本社人事との関係性も従来と異なる。従来型の企業では、本社人事と部門人事に上下関係がある場合も少なくない。本社人事が人事施策をつくり、部門人事は本社人事から下りてきた施策をそのまま事業部に広げていく。