特集│HR KEYWORD 2022 整える LXP LXPに見いだす新・日本型学習モデルの可能性 齊藤心吾氏 柴山雄太氏 ライトワークス
学びの在り方として、企業が対象者に学習機会を与える方法から、多数のプログラムを用意し従業員が自ら選び・学ぶ方法への転換が始まっている。
管理から“支援”へ学習モデルが大きく変わるなか、注目を集めるプラットフォーム「LXP」とは。
特徴と導入のポイントを識者に聞いた。
学びの“体験”を支えるプラットフォーム
社内教育を担う人事部門にとって、従業員の学びの進度は気になるところだ。昨今は、コロナ禍で増えたひとり時間を自己研鑽に充てようとする機運も手伝い、学びの機会は格段に増えつつあると言える。
運営側からすれば、学習管理は煩雑化する一方だが、長年にわたりその手助けをしてきたのがLMS(学習管理システム:Learning Management System)である。そして近年、この分野においてLXP(学習体験プラットフォーム:Learning Experience Platform)が注目を集めている。何がどのように異なるのか。
「双方の違いは、力点の置き方にあると思います」と語るのは、大手企業向けにLMS・LXPを提供するライトワークスで、システムのエバンジェリストを担う柴山雄太氏だ。
「LXPとは、学習者の好みや関心に合わせて自らの学習をデザインでき、それにより成長を促すプラットフォームです。ユーザーのポジションやレベルなどの属性に加え、過去の受講履歴や興味関心、キャリアの志向性に基づき、最適なコンテンツを提案する機能を持ちます。
対するLMSは、運営側である管理者に主導権を置いたもの。適切なターゲットに適切なタイミングで学習させたいコンテンツを届けることを目的としています(図1)」(柴山氏)
LMSをトップダウン型とよぶならばLXPはボトムアップ型の仕組みだ。つまり、「上司や会社に言われたから」などの受け身ではなく、どういったキャリアを歩みたいか、どういったスキルを身につけるべきか等の必要性を自ら感じることで主体的な学びを促す。
LXPが求められるようになった背景には、日本企業の生産性や従業員個々人の専門性の低さへの懸念が挙げられる。ジョブ型人事制度への転換や組み込みを検討する企業が増えるなか、従業員の自律的な学びを促したいというニーズが増えているからだ。しかし、このLMSとLXPは二元論で語れる類のものではないと、同社の執行役員、齊藤心吾氏は説明する。
「組織体系が複雑な大手企業であるほど、それぞれの階層に偏りなく適切なコンテンツを届けるために、“管理”は入ってしかるべきでしょう。また、コンプライアンスやセキュリティーに関するラーニングは全従業員に必要ですし、今ある一律の研修が完全になくなることはありません。学習者に寄り添った学びの設計も必要になったという話で、LMSが完全にLXPに切り替わるわけではなく、LMSにLXPの機能がオンされるというのが正確だと思います」(齊藤氏)
「LMS」と聞くと主にeラーニングのコンテンツを管理するシステムを連想する人が多いのではないだろうか。LXPはそれだけではなく、現場で活用されるロールプレイングや商品説明動画等、ナレッジを共有できる機能もあることが少なくない。コンテンツは従来のLMSのように限定された範囲ではなく、外部のオンライン学習サービスと紐づけることができ、それによって驚くべき量の教材をラインナップ化できるという。