第6回(最終回) 人材育成新時代にAIを使いこなす3つの極意 吉田尚秀氏 EYストラテジー・アンド・コンサルティング ピープル・アドバイザリー・サービス シニアマネジャー
いまこそ注目したい組織、人事領域のBuzzword。最終回となる第6回目では、
人材教育におけるAIサービスの活用方法について解説します。
AI活用の現状
近年、AIの認知度はますます高まっています。ある調査によると、2020年5月の時点で日本企業の35% 程度がすでにAI を利用しており、さらに25% 程度が「AI 活用試験を推進中」と回答しています※1。つまり、2社に1社は何かしらの形でAIに触れていることになります。
人事領域も例外ではなく、様々な企業がAIサービスの実施を発表しています。図1にいくつか例を挙げましたが、採用から生産性まで、領域を問わずサービスが登場していることがおわかりいただけるでしょう。
そこで本稿では人事におけるAIサービスの活用法、特に人材教育の視点から見たAIとの上手な付きあい方についてご紹介します。
このようなトピックでは「AIとは何か」が常に議論となりますので、本稿でもまず定義を明確にしておきます。図1はAIによるサービスとして各社が発表したものをリストアップし、作成しました。ただ、実際には「これがAIか?」と思う内容でも、AIと謳っているケースも見られます。
あらためて、AI の定義とは何でしょうか。人工知能学会では代表的なAIの機能(研究目的)として、「推論」と「学習」を挙げています※2。たくさんの因子から有益そうな傾向を探ることを「学習」、そうやって導出した傾向を活用してアウトプットを推定することを「推論」とよびます。冒頭で紹介したレポートでも、AI を「推論と学習を通じて自己修正するシステム」としていることから、「推論」と「学習」が現在のAI の主たる構成要素といって差し支えないでしょう。
さらに重要なAIの特徴は、プログラム自らがこれらを行う点です。つまり「人間の手によるガイドから離れた状態で推論や学習を行うプログラムがAI」ということになります。
たとえば離職リスク予測モデルのサービスを例に考えてみましょう。固定的な予測モデルに各種変数をあて込んでリスク値を出すだけのプログラムは、この定義によればAIではなく、単なる計算プログラムです。
では、AI を使うとどんなプログラムになるかといえば、「新たに離職者が出るとモデルが自動的に見直され、出力値が変わる」「別のデータソースを自動探索し、モデル精度を高め続ける」といったものでしょう。
AI かそうでないかで使い勝手や導入効果は大きく変わります。導入や活用を考えている人事担当の方々は、「本当にAIなのか」という視点も踏まえて各サービスを検討いただくとよいことを付記しておきます。