第2回 TBSテレビ|プログラムを日々アップデート オンラインでも現場を体感 “コンテンツ愛”を高める新入社員研修 大鶴史朗氏 渡辺一充氏 永田桃子氏 人事労政局 人材開発部
TBSテレビでは例年、番組制作や被災地などの現場での学びを重視し、コンテンツ愛を高める新入社員研修を行ってきた。
今年度はカリキュラムを変更し、オンライン化を決断。
番組制作のように新入社員のニーズをキャッチし、日々アップデートしていくプログラムや、現場を体感してもらう工夫について聞いた。
新人教育のコンセプトは「コンテンツ愛」
TBSテレビの新入社員研修は、メディアリテラシーなどを座学で学ぶ「基礎研修」と、報道やバラエティなどの現場で学ぶ「現場研修」、震災の被災地などを訪れる「特別研修」の3つで構成されている。人材開発部部次長の大鶴史朗氏は、新入社員研修の狙いについてこう話す。
「新人教育のコンセプトは、『コンテンツ愛』です。放送人としての基礎を身につけ、自局に限らずあらゆるコンテンツに触れて、コンテンツを愛し、コンテンツ制作力を養ってほしいと考えています。研修の最終的なゴールは制作発表。実際に愛をもってコンテンツ作りに臨み、自分や他者が作ったコンテンツに誇りをもってもらうことを目指しています」(大鶴氏)
今年度の新入社員研修はオリンピックを挟み、半年間予定されていた。しかし、開始直前に新型コロナウイルスの感染が拡大。研修のオンライン化を決断した。当時の状況について、人材開発部の渡辺一充氏は、こう振り返る。
「3月27日にすべてのカリキュラムを変更し、オンライン化することを決断しました。そこから一つひとつのプログラムを考えていったのですが、業務用パソコンやスマホの入荷のめどが立たなかったり、新入社員の自宅にネット環境が整っていなかったりと、当初は混乱もありました。ただ、当社では以前からテレワークを推進していたことや、クラウド環境が整っていたことなどもあり、オンラインに移行しやすい環境ではありましたね」(渡辺氏)
現場研修に代わり人材開発部員が講師に
そして4月1日、入社式も開かれないまま、オンライン研修が始まった。基礎研修は、スムーズにオンライン化できたと大鶴氏。
「毎年恒例の『1枚の写真』で自分を知ってもらう自己紹介も、オンラインで行いました(図1)。さらに、それをWeb社報で展開し、社内の人間に新入社員を広く知ってもらう工夫をしました。基礎研修はほとんど内容を変えずにオンライン化できたこともあり、5月の連休までは特に大きな問題も起こりませんでした」(大鶴氏)
しかし、連休後に予定していた現場研修は、その時点で実施が難しい状況になっていた。
「ご記憶の方も多いかと思いますが、ちょうどそのころ、ドラマやバラエティの撮影が中断し、再放送ばかり流れていました。混乱している現場に、何も知らない新入社員を入れるわけにはいきません。そこで、現場研修の代わりに人材開発部員が講師となり、自身の体験談を話す手作り講座を実施することにしたのです」(大鶴氏)
人材開発部員10名は、報道やドラマ、バラエティなど出身が様々で、専門分野も異なる。全員が講師となり、それぞれの強みを生かして講座を作ったという。人材開発部の永田桃子氏もその1人だ。永田氏は制作局ドラマ部出身で、AD(アシスタントディレクター)やAP(アシスタントプロデューサー)として『逃げるは恥だが役に立つ』や『コウノドリ』など多くのドラマ制作に携わってきた。
「私は子どもが小さいので、子育てとドラマ制作の悩みの共通点について話しました。たとえば、制作現場で『なんでこんなに怒られているのかわからない』という悩みと、子育てで『なんでこの子が泣いているのかわからない』という悩みは、実は共通しているといったことです。一見理不尽に思える悩みも、新しいことにチャレンジしているからこそなんだということを伝え、安心感や今後に向けての心構えをもってもらえたらという思いがありました」(永田氏)
人材開発部員による手作り講座は、2~3週間に及んだ。新入社員との距離が縮まるきっかけにもなったという。