Column 成熟社会とSNS文化が彼らを「大人しく」した! 今どきの若者との向き合い方
現在の若手社員が産声を上げた1990年代以降に起こった出来事といえば、バブル経済の崩壊にIT 革命、さらにはイラク戦争やリーマンショック、東日本大震災など、ショッキングなものばかり。
低成長時代に生まれ育った彼らの価値観や仕事観とは。
現代の若者の心をよく知る、原田曜平氏に聞いた。
成熟社会特有の“まったり感”
今どきの若者は、大人しくて従順、まじめ、そして元気がないと言われるが、本当なのか。
入社以来、一貫して高校生や大学生、若手社会人など、多くの“若者”と向き合ってきた博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平氏は、次のように語る。
「元気がないというのは、その通りでしょう。私たちが社会人になった頃は、羽目を外したりやんちゃをしたり、ことあるごとに反抗したりといった若手社員も少なくありませんでした。しかしここ数年の若手社員の特徴というと、特に悪さや反抗をすることもなく、指示を出せばその通りに仕事をする、『良くも悪くも素直』というのが全体的な印象ではないでしょうか」(原田氏、以下同)
だが、上司や先輩たちが描くのは、いまだにエネルギッシュで生意気なかつての自分たちのような若者像。ギャップを感じるのも無理はない。
では、2010年代の若者像を築いてきたものは何だろう。やはり、「低成長の時代」と言われる1990年代以降の社会や経済は無視できない。
「今の若者は、国や社会が実際に成長していく光景を目の当たりにしたことがなく、来年、再来年はもっと良くなるという希望を持つことができない。頑張っても見返りがあるとは限らないことを、感覚的に知っているのです」
また、彼らが生まれた時には、既に周囲はモノに溢れていた。物心がついた頃にはパソコンや携帯電話も普及し始めており、“何もない”環境で育った人は皆無に近い。