第16回 三井不動産 新オフィス『CROSSING』(東京都・中央区)
どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行氏が企業のオフィスや研修施設をめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。
日本橋室町三丁目地区の再開発にともない、2015年から新オフィスのプロジェクトを開始した三井不動産。5年の歳月を経て、2020年2月に同地で新オフィスでの業務を本格稼働させた。
かつては、部門ごとの執務室が異なるビルやフロアに点在していたのを、今回の移転で集約させた。部門という垣根を越えた連携が生み出す「イノベーションの創出」、そして「働き方改革の加速」を目指し、コンセプトは「CROSSING―人・情報が交差し、イノベーションを生み出す」が掲げられた。
経営上の課題から生まれた3つの設計思想
「CROSSING」のコンセプトは、①「個人レベルでのつながり」②「組織レベルでのつながり」③「企業レベルでのつながり」の強化を目的とした設計思想に体現されている。
これら3つは、同社が移転プロジェクトを発足させるにあたり、経営上の課題として掲げたものだった。この課題に対する解決策の検討は、トップダウンではなく中堅社員で組成されたワーキングチームからのボトムアップというかたちで推進されたという。
具体的に①では「働き方改革」および「健康経営の実現」(多様な働き方・働く場を選べる)、②では「本部・部門間のシナジー効果発揮」(情報・ノウハウのオープン化を図る)、③では「リーディングカンパニーとして新時代にふさわしいオフィスの創造」(外部と積極的につながる)を目標としている。
上記①~③の実現に向けて、同社では「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)※」「動線」「環境」の観点から工夫がなされた。