CASE3 ビームス|どんな環境でも情熱・感性・個性を発揮 主体性を伸ばす現場主導OJT教育の再構築 石切山 哲也氏 ビームス 人事本部 人材開発部 係長
国内外に約170の店舗を展開するセレクトショップのビームスでは、入社後の3年間を基礎教育期間とし、店舗におけるOJT教育を中心に若手社員の戦力化に取り組んでいる。
業界や企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、現場で見えてきた課題や人事の役割、人材育成の展望について、話を聞いた。
小売業は、コロナ禍の影響がもっとも大きい業界の1つといえるだろう。多くの老舗店、有名店が閉店や撤退を余儀なくされた。
セレクトショップの大手・ビームスにおいてもコロナ禍という逆境は例外ではない。業界平均離職率11%のなか、4%台をキープする“人が辞めない”同社であるが、その秘訣となっている人材育成にも大きな影響があったのではないか。
人事本部人材開発部の石切山哲也氏は「明確になった課題がある一方社員の自律性が発揮された面もありました」と建設的に語る。コロナ禍はどのような変化をもたらしたのか。
まずは同社の基本的な教育設計から見ていこう。
3年間の基礎教育で活躍の土台を形成
「100人いれば100通りのビームスがある」―これは、ビームス代表取締役社長である設楽洋氏の言葉だ。この言葉どおり、社員の採用時も、一人ひとりの「情熱・感性・個性」を何よりも重視している。同社では入社後3年間を基礎教育期間とし(図1)、どんな環境でも「情熱・感性・個性」が発揮できる土台をつくることを目的にしていると、石切山氏は説明する。
「新人育成のキーワードは『主体性』です。3年間の基礎教育期間のうち、1年目は自己と向き合い、自律的な成長基盤を固める時期としています。そのうえで、仕事のとらえ方や影響力の範囲を広げていくのが2、3年目です。この『固めて→広げる』基礎教育をとおして、自律的に成長する力や巻き込む力、キャリア自律の考えといった土台を形成することを目指しています」(石切山氏、以下同)
「経験学習」を習慣化するフィードバックのしくみ
入社研修を経て店舗に配属された新入社員は、半年間にわたるOJT研修を受ける。先輩社員トレーナーの指導を受けながら、業務をとおして商品知識や接客ノウハウを身につけ、“経験学習”のサイクルを回していくのである。
経験学習の習慣化のために行われているのが、半年間、毎月1回行われる面談だ。特徴は、面談の場に本人とトレーナーだけではなく、店長やエリアマネジャー、さらには人材開発の担当者も参加する点にある。
「面談では、チェックシートを使って新人が1カ月を振り返り、現在の状況や取り組まなければいけない課題を洗い出します。それに対して、トレーナーや店長などが、様々な観点からフィードバックを行います。新人はそれらを踏まえて次に向けた一歩を自分で決めるのですが、チェックシートを用いることで、大人数からのフィードバックがあっても基準がぶれず、次のアクションを決めやすいという点がポイントです。そして次の1カ月、現場で実践する、というサイクルを毎月繰り返します。