企業事例③マツダ 人づくり・職場づくりから始まる新時代のメンタルヘルスケア
2万人を超える社員を擁するマツダ。同社では、40年以上の長きにわたり、社員の心身の健康についての取り組みを積極的に行ってきた。誰もがメンタル不調に陥る可能性がある時代では、人づくり、職場づくりからメンタルヘルスケアに取り組む必要があると話すのは、同社健康推進センターの菖蒲田 裕子氏だ。氏によれば、マツダ流ポジティブ・メンタルヘルスケアは、人づくりと密接なかかわりを持つものである。そのココロとは。
会社による宣言が施策の強化を後押し
「当社のメンタルヘルスケアの歴史は長く、1968年に開始した復職審査にさかのぼります。専門的な領域ということもあり、外部の精神科医に協力を仰ぎながら、メンタル不調を訴える社員への支援を行っていました。以来、今日に至るまで社員の心の健康にまつわる課題には、社を挙げて取り組んでいます(図表1)」
こう話すのは、人事本部安全健康推進部
健康推進センターでマネジャーを務める菖蒲田 裕子氏だ。
マツダには、実に2万人を超える従業員が所属している。そうした企業規模で、社内は必然的に日本社会の縮図の様相を見せる。メンタル不調に限らず、メタボリックシンドロームや禁煙対策など日本社会の諸課題の中には、同社の中でも課題として認識されることも多くある。
そうした状況から、1968年開始の復職審査をはじめ、1988年開始の保健師による職場巡回相談など、他社に先駆けてメンタルヘルスケアに取り組んできた同社。取り組みをさらに進化・体系化するきっかけとなったのは、2000年に厚生労働省から出された『事業上における労働者の心の健康づくりのための指針』だった。「国から一定の指針が出されたことを契機に、当社として今まで取り組んできたことを再点検すべきとの判断から、施策の見直しが図られました。そこで出されたのが『マツダハートフル宣言』です」
マツダハートフル宣言とは、2003年に出された社員の心の健康づくりにまつわる宣言のこと。「マツダにとって最も重要な資本は従業員の皆さんです」から始まるメッセージで、会社としてメンタルヘルスケアに労使協同で取り組んでいくことを明言したものだ。以来、同社の取り組みの拠り所、指針となっている。「これによって、当時専務だった、現・代表取締役会長 社長兼CEO山内孝が社員のメンタルヘルスケアに力を入れることを宣言したことは、取り組みを推進させるうえで強い後押しとなりました。いわばメンタルヘルスケアにより力を入れて良いというお墨つきをもらったようなものです。不調者に対する限定的な取り組みから、全社員対象の取り組みへと強化するきっかけになりました」